神経機能障害児における嚥下障害に対する介入

口腔咽頭嚥下障害、すなわち嚥下困難とは、噛んで食物を飲み込めるようにし、 舌の後ろへ食物を移動させ、飲み込んで「のど」つまり咽頭を通して食物を移動させることが難しい状態です。 後天的脳機能障害(脳性麻痺、脳外傷、脳卒中など)、 遺伝性症候群(ダウン症候群、レット症候群など)および変性性疾患(筋緊張性ジストロフィーなど)などの神経機能障害のある多くの小児に嚥下困難がみられます。 本レビューでは、神経機能障害の小児における口腔咽頭嚥下障害に対する介入の有効性を検討しました。 本レビューに組み入れた3件の研究では、口の感覚運動機能の治療と唇の働きを強める介入を検討していました。 3つの主要アウトカム:嚥下に対する口腔咽頭機序についての身体的機能(唇を閉じたままにできるか)、 胸部感染症と肺炎にかかったか、食事のかたさと、3つの副次アウトカム:発育の変化、 ルーチンの食事時間での子供の参加の程度、食事介助での両親または介護者のストレスの程度に注目しました。 このような子供たちでの口腔咽頭嚥下障害に対する何か特定の介入について、 ランダム化比較試験(RCT)や準RCTによる質の高いエビデンスは現在不足していると結論しました。 神経機能障害の子供における口腔咽頭嚥下障害に対する介入の効果を評価する、大規模なランダム化比較試験が必要です。

著者の結論: 

本レビューでは、神経機能障害児に対する特定の口の運動療法の有効性について結論的な結果を示す、RCTおよび準RCTによる高品質のエビデンスは現在不十分であると示された。 口腔咽頭嚥下障害に対する介入の有効性を評価する、大規模な(統計学的に十分な検出力の)ランダム化試験が至急必要である。

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背景: 

口腔咽頭嚥下障害とは、嚥下の口腔準備相(咀嚼および食物の準備)、口腔相(食物または液体を舌で口腔後方へ動かし咽頭後部に移動させる)、 および咽頭相(食物または液体を嚥下し咽頭から食道へ移動させる)に伴う障害を包含している。 一般的に嚥下障害を発現している神経機能障害児は、後天的脳機能障害(脳性麻痺、脳外傷、脳卒中など)、 遺伝性症候群(ダウン症候群、レット症候群など)および変性性疾患(筋緊張性ジストロフィーなど)の小児であるが、これらに限定されているわけではない。

目的: 

神経機能障害児における口腔咽頭嚥下障害に対する介入の有効性を検討すること。

検索戦略: 

2011年10月に以下の電子データベースを検索した:CENTRAL 2011年第3号、MEDLINE(1948~2011年9月第4週)、 EMBASE(1980~2011年第40週)、 CINAHL(1937年~)、ERIC(1966年~)、 PsycINFO(1806~2011年10月第1週)、 Science Citation Index(1970~2011年10月7日)、 Social Science Citation Index(1970~2011年10月7日)、 Cochrane Database of Systematic Reviews 2011年第3号、 DARE 2011年第3号、 Current Controlled Trials (ISRCTN Register) (2011年10月15日)、 ClinicalTrials.gov(2011年10月15日)、WHO ICTRP(2011年10月15日)。 Networked Digital Library of Theses and Dissertations、Australasian Digital Theses ProgramおよびDART-Europe E-theses Portal(2011年10月11日)を用いて学位論文などの論文を検索した。 最後に、論文の参考文献リストからその後追加された参考文献を入手した。

選択基準: 

口腔咽頭嚥下障害と神経機能障害の小児を対象とした、ランダム化比較試験(RCT)および準ランダム化比較試験を本レビューに選択した。

データ収集と分析: 

3名のレビューア(AM、PDおよびEW)が選択について別々にタイトルおよび抄録を調べ、結果を討議した。 抄録が選択基準を満たすか不明の場合は、論文全文を入手し各論文の選択について別々に評価した。 コントロール群の性質による比較(口の感覚運動治療と無治療との比較など)でデータを分類した。 嚥下(口唇閉鎖の維持など)の口腔咽頭機序についての身体的機能、胸部感染および肺炎の罹病、 小児が摂取可能な食事のかたさを主要アウトカムとして、口腔咽頭嚥下障害の介入の有効性を評価した。 副次アウトカムは発育の変化、ルーチンの食事時間における小児の参加レベル、食事介助に関連した両親または介護者のストレスレベルであった。

主な結果: 

3件の研究が本レビューの選択基準を満たした。 2件の研究は標準治療に比べた脳性麻痺の参加者に対する口の感覚運動介入に基づいたもので、 3番目の研究は、無治療と比較した1型筋緊張性ジストロフィーの小児に対する口唇強化運動を検討していた(Sjogreen 2010年)。 研究のうち1件は異なる病態の参加者を対象としており、残りの2件は口の感覚運動治療を用いているものの、 異なる強度と期間の非常に多様なアプローチを用いていたため、3件にわたるメタアナリシス統合は不可能であった。 これらを統合しないという決定は、プロトコルに沿ったものであった。 本レビューでは、4つのアウトカム:嚥下に対する口腔咽頭機序についての身体的機能、胸部感染および肺炎の罹病、食事のかたさ、および発育の変化について、個々の研究の結果を提示する。 しかし、これらの研究に基づいて、口腔咽頭嚥下障害に対する特定の介入の有効性について明らかな結論に達することは不可能であった。 1件の研究は欠測データによる症例減少バイアスが高リスクで、 ベースライン時に介入群とコントロール群に統計学的に有意である差(体重)があり、 試験の他の側面を十分記載していないため、他のバイアスリスクの可能性を評価できなかった。 子供が介入群かコントロール群か知っている両親がいくつかのアウトカムを評価しているため、別の研究の検出バイアスは高リスクであった。 3番目の研究は全体としてバイアスが低リスクのようであったが、他の2件の研究と同様にサンプル・サイズが小さかった。

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