高コレステロール血症では、血中にコレステロールが多く存在する。ヒトにおいて、高コレステロール血症の原因は、低密度リポタンパク(LDL)コレステロール、すなわち「悪玉」コレステロールの高値である場合が多い。高コレステロール血症になると、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患を発症するリスクが高まる。植物に含まれるフェトエストロゲンに似た化学物質であるイソフラボンは、高コレステロール血症を改善する上で役立つと考えられる。大豆やレッド・クローバーは、イソフラボンを豊富に含んでいる。アジア人は西欧人と比較して、通常の食事からイソフラボンをより多く摂取している。
高コレステロール血症の治療としてイソフラボンの効果を評価するため、イソフラボン又はイソフラボンを含む大豆タンパクに関する5件のランダム化比較試験を検証した。試験は、3~6カ月間行われており、208名の参加者を対象としていた。原因を問わない死亡、心臓発作や脳卒中などの心血管事象、罹病率、合併症、健康関連の生活の質および費用に関する転帰データはなかった。2試験で、胃腸障害(膨満感および便秘)および顔面紅潮の増加などの有害作用を報告している。重篤な有害事象が認められた試験はなかった。選択した試験では、コレステロールを低下させる効果はイソフラボンに認められなかった。しかし、選択した試験の質には、いくつかの重要な制限があり、参加者の数も少なかった。質の高い綿密な試験を行って、心血管疾患や健康関連のQOLなど、患者に重要な転機を評価する必要がある。
高コレステロール血症の被験者において、患者の重要な転帰やコレステロール値低下に対するイソフラボンの効果を示すエビデンスは、認められなかった。バイアスのリスクのいくつかのドメインにおいてバイアスのリスクが高い又は不明であるため、および試験の被験者数が少ないため、本結果は慎重に解釈するべきである。
高コレステロール血症は、心血管疾患の重大な危険因子である。イソフラボンは、高コレステロール血症を改善する上で有効と考えられる。
高コレステロール血症に対するイソフラボンの効果を評価すること。
以下のデータベースを検索した。Cochrane Library(2012年第9号)、MEDLINE、EMBASE、Chinese BioMedical DatabaseおよびChina National Knowledge Infrastructure(2012年9月まですべて)。
高コレステロール血症の被験者を対象にイソフラボンとプラセボ、又はイソフラボン+分離大豆タンパクと分離大豆タンパクのみを比較したランダム化比較臨床試験について検証した。
2名のレビューアが独立して、対象集団および介入特性を抽出した。意見の不一致が起こった場合、又は第三者に要求された場合、議論を通じて解決した。重要な基準(割り付けの順序、割り付けのコンシールメント( 隠蔵化)、被験者および関係者の盲検化、転帰評価の盲検化、不完全な転帰データ、選択的な報告、バイアスに関するその他の原因)について、試験のバイアスのリスクを評価した。
5件のランダム化試験(208名の被験者:介入群104名、対照群104名)を選択した。介入の期間は3~6カ月間であった。4試験では、非アジア系の集団を対象とした結果を報告しており、英語で公表されていた。1試験では、中国人の集団を対象とした結果を報告しており、中国語で公表されていた。全般的に、選択した試験のバイアスのリスクは高い又は不明であった。原因を問わない死亡、罹病率、合併症、健康関連のQOLおよび費用に関する転帰データはなかった。2試験で、胃腸障害(膨満感および便秘)および顔面紅潮の増加などの有害作用を報告している。重篤な有害事象が認められた試験はなかった。プラセボと比較してイソフラボンの有益性を示すわずかに有意な効果が、トリグリセリドについて認められた(平均差[MD]-0.46 mmol/L[95%信頼区間{CI} -0.84~-0.09];P = 0.02;52名の被験者;2試験)。総コレステロール、低密度リポタンパクコレステロールおよび高密度リポタンパクコレステロールに対して、イソフラボンの有益性を示すような統計学的に有意な効果は認められなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
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