生殖補助医療における通常の精子選択(ICSI)と超高倍率精子選択(IMSI)の比較

背景:細胞質内精子注入(ICSI)などの精子の顕微操作は、男性パートナーの精子濃度、運動性、またはその両方が低下しているカップルの治療に非常に有用である。過去10年の間に、超高倍率(6000倍)で精子を分析するという、精子選択のための異なる手法が提示されるようになってきた。初期の研究では、着床失敗を繰り返すカップルにおいて、高倍率下で選択された精子を用いた細胞質内精子注入(IMSI)が、従来の方法(200~400倍)で選択された精子を用いたICSIよりも高い妊娠率と関連していることが示された。しかし、私たちの以前のコクラン・レビューによるエビデンスでは、この介入の真の有益な効果は不明であった。

検索期間:2019年11月に医学文献の検索を更新し、従来のICSI(200倍から400倍の倍率を使用)の手順と比較して、IMSI(6000倍の倍率を使用)の有効性と安全性を評価した研究を探した。

研究の特性:2775組のカップルを評価した13件のランダム化比較試験(旧版より4件多い)が見つかり、通常のICSIとIMSIによる生殖補助医療を比較した。これらの研究は、生殖医療センターや大学から資金提供を受けていた。

主要な結果:私たちが特定した非常に質の低いエビデンスによると、IMSIにICSIを超える有益性があるかは不確実である。IMSIで生産児を得る確率は20%~32%であり、対するICSIでは25%であった。通常のICSIを受けた女性の流産リスクが7%であるのに対し、IMSIでのリスクは5~10%であった。IMSIを用いた臨床妊娠率は35~44%であり、ICSIを用いた場合は32%であった。

エビデンスの質:私たちは、含まれる研究の限界(バイアスのリスク)、研究間で観察された効果の不一致、出版バイアスのリスクの高さから、エビデンスの質を格下げした。先天性異常に関するエビデンスはなかった。私たちは、臨床現場で ICSI の代わりに IMSI を使用することを提案するには現在のエビデンスは非常に限られていると結論付けた。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 小林絵里子 翻訳、[2020.11.03] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD010167.pub3》

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