多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性において、排卵を起こすために用いるゴナドトロピン製剤について

レビューの論点

クロミフェンクエン酸塩で排卵や妊娠に至らなかったPCOSの女性に対して、排卵を誘発するための第二選択薬として用いる、ゴナドトロピン(生殖器系を調節するホルモン)製剤の効果と安全性を比較する。

背景

排卵障害による不妊症は、女性がカウンセリングや治療を受けようとする理由として最もありふれたものである。これらの女性は、排卵を刺激する薬剤を用いた治療(いわゆる排卵誘発)を受ける。この治療の第一選択として、通常、クロミフェンクエン酸塩を含んだ錠剤が用いられる。この薬剤に反応しなかった場合の最も一般的な第二選択治療は、ゴナドトロピン製剤を用いた排卵誘発であり、これらは注射製剤である。現在までに、多くの種類のゴナドトロピン製剤が開発されている。閉経女性尿由来の製剤として、卵胞刺激ホルモン(FSH)を精製した製剤(FSH-P)、より純度に精製した製剤(FSH-HP)があり、加えて、黄体形成ホルモン(LH)も含む製剤(hMG)、そのより精製された製剤(HP-hMG)がある。他に、遺伝子組み換え卵胞刺激ホルモン製剤(rFSH)が更により純度が高いものとして人工的に生成されるようになった。

また、クロミフェンクエン酸塩を用いた6周期で、排卵はしたが妊娠しなかった女性も、クロミフェンクエン酸塩を続けるかゴナドトロピン製剤に変更するかを検討するかもしれない。

試験の特性

本レビューは、15の試験を含み、対象女性は2387人である。10の試験が尿由来のゴナドトロピン製剤とrFSHを比較していた。これらのうち、3試験はrFSHとhMGを、7試験はrFSHとFSH-HPを比較していた。4つの試験は、FSH-PとhMGを比較していた。残りの1つは、ゴナドトロピン製剤とクロミフェンクエン酸塩の継続を比較していた。rFSHとFSH-P、FSH-HPとFSH-Pとを比較した試験は同定できなかった。本エビデンスは、2018年1月現在のものである。

主要な結果

尿由来のゴナドトロピン製剤とrFSHの比較において、出生率、多胎率、臨床妊娠率、流産率にほとんど或いはまったく違いはないようである。hMGと尿由来のFSHのどちらが、PCOS女性における妊娠のアウトカムを改善させるかどうかは、はっきりしなかった。また、これらの介入が卵巣過剰刺激症候群の頻度を減らすかどうかもはっきりしなかった。

クロミフェンクエン酸塩による治療を継続することと比較した場合、ゴナドトロピン製剤の治療は多胎率を増やすことなく出生率を上げることができていた。ゴナドトロピン製剤はクロミフェンクエン酸塩と比較して、臨床妊娠率は上昇したが、一方で流産率も上昇した。この試験においては、卵巣過剰刺激症候群を発症した女性はいなかった。

エビデンスの質

尿由来ゴナドトロピン製剤とrFSHの比較、hMGととFSH-Pの比較結果について、エビデンスの質は低度から非常に低度であった。ゴナドトロピン製剤とクロミフェンクエン酸塩の継続の比較については、エビデンスの質は中等度であった。

本レビューに含んだ15試験のうち10試験では、商業的スポンサーを報告していた。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 内藤未帆翻訳 [2019.02.12] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD010290》

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