背景
神経障害性疼痛は複雑でしばしば障害を引き起こす状態であり、多くの人が長年にわたって中等度または重度の疼痛に苦しみ、生活の質に影響する。この疾患は治療が困難で、部分寛解に達するのは一般的に患者の40%~60%にすぎない。
神経障害性疼痛は、損傷した神経から生じる痛みである。損傷した組織(例えば転倒、切り傷、膝関節炎など)から健康な神経へ伝達される痛みのメッセージとは異なる。神経障害性疼痛は、損傷した組織の痛みに使われる薬とは別の薬で治療されることが多い。神経障害性疼痛の治療に使われることがある薬には有害な副作用が生じる可能性があるため、現在では薬草製品が痛みを軽減するために代わりに試されている。
関連する臨床試験について、2018年3月に検索を行った。中等度の神経障害性疼痛を患っており、痛みを軽減するためなんらかの形(食事や錠剤で摂取、または皮膚に塗布)で薬草製品を使用した成人を対象にした試験を検索した。また、これらの薬草製品にあるかもしれない副作用についても情報を収集した。
試験の特性
128例の参加者を評価した2件の試験を組み入れた。試験規模は、21~85歳の参加者54~74例であった。両試験とも男性と女性を組み入れていた。いずれの試験でも、薬草療法(ナツメグまたはセントジョンズワート)とプラセボが比較され、鎮痛薬の継続使用が認められた。どちらの試験も副作用を報告していた。
主要な結果
参加者からは30%以上の疼痛強度の低下について報告はなく、ナツメグまたはセントジョンズワートに対する反応のいずれにも疼痛総スコアの目立った低下はみられなかった。治療群とプラセボ群との間には、脱落率および副作用数の減少も認められなかった。
エビデンスの質
複数の試験から得られた科学的根拠(エビデンス)の質を、「非常に低い」、「低い」、「中等度」または「高い」という4つのレベルを使って評価した。非常に低い質のエビデンスとは、その結果がきわめて不確かであることを意味している。高い質のエビデンスとは、非常に確信が持てることを意味する。
2件の小規模試験のみが本レビューの検索基準を満たしていた。いずれも、有益性または有害性の可能性に関する高い質のエビデンスを提供していなかった。そのエビデンスは非常に低い質と判断した。このため、本レビューに含まれる試験の結果はきわめて不確かであり、意味のある結論を出すことができない。神経障害性疼痛を患う成人の治療に薬草製品を使用した場合、何らかの有益性または有害性があるかどうかを正確に評価するには、より大規模で質の高い試験が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD010528.pub4》