論点
灸は、中国伝統医学において、QOL(生活の質)を向上させるため、また、さまざまな疾患に対する従来の治療の副作用を軽減するために使用される。灸の施術では薬用植物を燃やすため、施術自体がアレルギー反応や火傷、感染症などの好ましくない副作用を生じる可能性もある。
本レビューの目的
灸が化学療法や放射線療法で多くみられる副作用を軽減し、癌患者の健康状態を改善するかどうかを明らかにするために、システマティック・レビューを実施した。
選択基準
癌の種類に関係なく、化学療法、放射線療法、またはその両方を受けた癌患者2,569例を対象とした29件の試験を評価した。
主な結果
血液細胞の増加、免疫機能活性化、化学療法や放射線療法の毒性作用による(吐き気、嘔吐など)胃腸症状の軽減、QOLの改善など、灸の多様かつ有益な作用を示す単一の小規模試験が複数あった。しかし、報告の質が低く、バイアスのリスクが高い試験方法を採用していたため、エビデンスの確実性は低かった。
エビデンスの確実性
エビデンスの確実性は低い、または非常に低い。
結論
現時点では、癌治療を受けている患者に対する灸の使用を支持または否定する良質なエビデンスは得られていない。有害作用の報告を義務付けた、質の高い試験が必要である。
《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)佐々木真理 翻訳、大野智(島根大学医学部付属病院臨床研究センター)監訳 [2019.02.02] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD010559》