低血糖の新生児に対する経口ブドウ糖ゲルの投与

レビューの論点

低血糖症を起こした新生児に対して、経口ブドウ糖ゲル(ゲル状の砂糖を口から飲ませること)は、無治療や他の積極的治療と比較して、低血糖の是正や長期の神経発達障害の軽減に有効か。

背景

新生児の低血糖はよく見られる問題であり、特定のリスクグループ(糖尿病の母親の乳児、早産児、出生体重の小さい児および大きい児)で頻繁に発生する。血糖値の低い新生児は、幼少期の発達障害のリスクが高くなる。この状態を改善させるために、一般的には積極的な治療が行われ、しばしば粉ミルクの使用や、新生児集中治療室に入院して輸液療法を受ける必要があり、結果として母親から一時的に引き離されることになる。口の中に塗る砂糖のゲルの利用は、血糖値の低い新生児の初期ケアとして、簡単かつ低コストで行える方法である。新生児の低血糖を是正し、神経発達への長期的影響を軽減するために、経口ブドウ糖ゲルが無治療や他の積極的治療よりも有効であるかどうかを調べた。

研究の特徴

高所得国で行われた2件の研究では、合計312人の新生児を対象に、低血糖を回復させるための 経口ブドウ糖ゲルの使用を評価した。このうち157人の新生児には経口ブドウ糖ゲルを頬の内側にすり込み、155人の新生児にはプラセボゲルをすり込むかまたはゲルをすり込まず、その後通常の授乳を行った。

主な結果

経口ブドウ糖ゲルは、おそらく個々の低血糖発作を改善し、2歳以降の主要な障害のリスクをわずかに減少させる可能性が示唆されたが、そのエビデンスは不確かである。経口ブドウ糖ゲルが他の治療の必要性を減らすかどうかを示すエビデンスは十分ではなかった。経口ブドウ糖ゲルはプラセボゲルと比較して、おそらく母子分離を軽減し、退院後母乳のみの栄養になる可能性を高めると思われる。研究者らは、新生児にブドウ糖ゲルを経口投与した場合、有害事象は発生しなかったと報告している。

2021年10月までの研究を検索した。現在進行中の研究が2件あり、発表されればこのレビューの結論が変わる可能性がある。

エビデンスの確実性

利用可能な研究は規模が小さく、十分な研究がなく、結果について完全に確信することはできない。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子 杉山伸子 翻訳[2022.05.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011027.pub3》

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