レビューの論点コクランレビューの著者は、閉経周辺期または閉経後の女性に対し、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の補充が安全かどうか、また、生活の質、更年期症状および性的機能を改善するかどうかを検討した。
背景更年期にはエストロゲン濃度が変動し、最終的にはエストロゲン濃度が低下する。これらのホルモン変化によって閉経周辺期または閉経後に更年期症状(顔面紅潮、寝汗、膣乾燥など)が認められる。DHEAはいわゆるホルモン前駆体で、体内でエストロゲンおよびアンドロゲンに変換される。更年期症状を軽減し、全般的な健康および性的機能を改善するため閉経周辺期および閉経後の女性にDHEAを補充した場合、エストロゲンおよびテストステロンの濃度が上昇する可能性がある。
本レビューの目的は、さまざまな用量および剤型のDHEAをさまざまな経路で7日間以上投与した場合を他の治療、プラセボまたは無治療と比較して、更年期女性に対するDHEAの有効性および安全性を評価することであった。
検索日このエビデンスは2014年6月3日現在のものである。
試験の特性更年期の女性計1273名を対象とした計28件のランダム化比較試験を組み入れた。対象集団の95%以上が閉経後の女性であった。女性の年齢は36歳から80歳であった。治療期間は1週間から1年間であった。対象試験の80%以上でDHEAを経口投与しており、1日用量は10 mgから1600 mgであった。
主な結果DHEAが生活の質を改善するというエビデンスは得られなかった。DHEAがアンドロゲンに起因する副作用[座瘡、望ましくない発毛(多毛)など]と関連しているというエビデンスが得られた。DHEAが更年期症状を軽減するかどうかは不明であるが、DHEAは性的機能をわずかに改善する可能性がある。
エビデンスの質生活の質および副作用に関するエビデンスの質は中等度であった。ランダム化、割付および盲検化に関するデータが不足しており、全体的に試験規模が小さく、入手可能なデータが限られていたため、エビデンスの質の評価を引き下げた。
DHEAが生活の質を改善するというエビデンスは得られなかったが、アンドロゲンに起因する副作用と関連しているというエビデンスが得られた。DHEAが更年期症状を軽減するかどうかは不明であるが、DHEAはプラセボと比較して性的機能をわずかに改善する可能性がある。
更年期には卵胞の反応が低下し、通常、エストロゲン濃度の変動がおこり、最終的にはエストロゲン濃度が低下する。このため、さまざまな閉経周辺期および閉経後の症状が認められる(顔面紅潮、寝汗、膣乾燥など)。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)はアンドロゲンの主な前駆体の一つで、テストステロンおよびエストロゲンに変換される。症状を軽減し、健康全般および性的機能(性欲、性交痛、満足感など)を改善するため閉経周辺期および閉経後の女性にDHEAを投与した場合、エストロゲンおよびテストステロン濃度が上昇する可能性がある。DHEAの有効性および安全性は確実ではないため、DHEA治療には議論の余地がある。本レビューでは更年期症状の治療におけるDHEAのエビデンスについて明確に述べ、ランダム化比較試験の結果を統合して有効性および安全性を評価する。
閉経周辺期または閉経後に更年期症状を呈する女性にDHEAを投与した場合の有効性および安全性を評価すること。
言語による制限を設けず検索した(2014年6月3日)データベースはCochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHLおよびLILACSであった。また、ISI Web of Knowledgeの学会抄録および引用文献一覧も検索した。試験レジストリから現在継続中の試験を検索した。入手した文献の参考文献一覧を確認した。
閉経周辺期または閉経後の女性にさまざまな用量および剤型のDHEAをさまざまな経路で7日間以上投与した場合を他の介入、プラセボまたは無治療と比較したランダム化比較試験を組み入れた。
2名のレビュー著者がそれぞれ試験の適格性を判断し、試験の質を評価した後、データを抽出した。追加情報について試験著者に問い合わせた。
閉経期の女性1273名を対象とした28件の試験を本レビューに組み入れた。16件の試験から、メタアナリシスを実施するためのデータを抽出することができた。全体的に試験は中等度から低い質で、メタアナリシスの対象試験の大部分は妥当な方法論を採用していた。プラセボと比較して、DHEAは生活の質を改善しなかった[標準化平均差(SMD)0.16, 95%信頼区間(CI)-0.03〜0.34, P = 0.10, 8試験, 女性287名(平行群間試験132名およびクロスオーバー試験155名)I² = 0%, 中等度の質のエビデンス; 当該アウトカムが報告されていた9件の試験のうち1件はバイアスのリスクが高いと判断されたため、感度分析から除外]。DHEAはプラセボと比較してアンドロゲンに起因する副作用との関連が高かった(主に座瘡)(オッズ比(OR)3.77, 95%CI 1.36〜10.4, P = 0.01, 5試験, 女性376名, I² = 10%, 中等度の質のエビデンス)。その他の有害作用との関連は認められなかった。試験結果に一貫性が認められず、測定法(連続、二値、変化、最終スコアなど)が異なっていたため全体的な効果を求めるための統合が容易ではなく、DHEAが更年期症状に影響を与えたかどうかは不明である。DHEAはプラセボと比較して性的機能を改善することが明らかになった[SMD 0.31, 95%CI 0.07〜0.55, P = 0.01, 5試験, 女性261名(平行群間試験239名およびクロスオーバー試験22名), I² = 0%;バイアスのリスクが高いと判断した試験1件は、感度分析から除外した]。
DHEAに関連した座瘡について、DHEAを経口投与した試験(OR 2.16, 95%CI 0.47〜9.96, P = 0.90, 3試験, 女性136名, I² = 5%, 極めて質の低いエビデンス)とDHEAを皮膚塗布した1件の試験(OR 2.74, 95%CI 0.10〜74.87, P = 0.90, 1試験, 女性22名, 極めて質の低いエビデンス)を比較した結果、差は認められなかった。DHEAを経口投与した試験(SMD 0.11, 95%CI -0.13〜0.35, P = 0.36, 5試験, 女性340名, I² = 0)をDHEAを膣内投与した1件の試験(SMD 0.42, 95%CI 0.03〜0.81, 1試験, 女性218名)と比較した結果、性的機能に対する効果に差はなかった。サブグループの差の検定:Chi² = 1.77, df = 1 (P = 0.18), I² = 43.4%この比較に関して、生活の質および更年期症状を評価するための十分なデータは入手できなかった。生活の質、更年期症状および有害作用に対するDHEAの効果をホルモン療法(HT)と比較するための十分なデータは入手できなかった。DHEAとHTを比較した結果、性的機能に関して大きな差異は認められなかった[平均差(MD)1.26, 95%CI -0.21〜2.73, P = 0.09, 2試験, 女性41名, I² = 0%]。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
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