レビューの論点
転移性原発ユーイング肉腫(診断時にすでに他の部位に広がっているがん)の小児、思春期および若年成人患者を対象とする大量化学療法と自家造血幹細胞移植(骨髄回復のために、患者から事前に採取した幹細胞の静脈内点滴投与)の併用療法が、従来の化学療法よりも無イベント生存期間、全生存期間、質調整生存期間(生存年数と生活の質(QOL)の双方を考慮した効果指標)、無増悪生存期間を改善したかどうかのエビデンスを検索した。この治療法により生じた有害作用も検索した。
背景
ユーイング肉腫とは、小児および若年成人の骨や軟部組織に発生することが多い腫瘍のことである。診断時に転移が認められたユーイング肉腫の患者は生存率が低く、5年生存率は30%以下である。孤立性肺転移の場合は、生存の可能性が多少高い(5年生存率は50%)。現在の治療では、多剤併用化学療法に外科治療あるいは放射線治療のいずれかまたは、その両方が併用される。ユーイング肉腫患者のために、治療の改善が不可欠である。
従来の化学療法と比較して、大量化学療法と自家造血幹細胞移植の併用療法により、診断時に転移性ユーイング肉腫であった小児、思春期および若年成人患者に対する延命効果が改善されるかどうかを検討するために、本レビューを実施した。
研究の特性
診断時に肺転移のあったユーイング肉腫の小児、思春期および若年成人患者を対象に、大量化学療法と自家造血幹細胞移植の併用療法を従来の化学療法および全肺照射と比較した1件の試験(世界の144施設で15年にわたり参加者267人が組み入れられた)を特定した。
主な結果
診断時に肺転移ユーイング肉腫だった若年患者では、1件の試験から得られた確実性の低いエビデンスから、治療群間の無イベント生存期間に明確な差は示されなかった。全生存期間、質調整生存期間、有害作用または無増悪生存期間については入手可能なデータはなかった。また、診断時に肺以外にも転移が認められたユーイング肉腫の小児、思春期、若年成人患者を検討した試験はなかった。明確な結論を出す前に質の高い研究を行う必要がある。
エビデンスの確実性
エビデンスの確実性は低かった。
エビデンスの新しさ
本エビデンスは2020年1月現在のものである。
《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)宮武 洋子 翻訳、遠藤 誠(九州大学病院整形外科)監訳 [2021.10.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011405.pub2》