慢性閉塞性肺疾患の自己管理のためのスマートテクノロジー

背景

慢性閉塞性肺疾患(COPD)はしばしば喫煙によって引き起こされる長期的な呼吸疾患である。スマートフォン、タブレットやコンピューターは、病状に関する情報、教育や指導を提供できるため、慢性閉塞性肺疾患の人が、在宅で生活する上で非常に有用かもしれない。この情報は、例えば、適切な運動プログラムを推奨したり、どのように禁煙方法をアドバイスしたり、個人に合わせてカスタマイズできる。

研究の特徴

3件の研究からの557人の参加者をレビューに含めた。319人は自己管理を支援するスマートテクノロジーを受け、238人は対面での口頭/書面またはデジタル情報の提供と自己管理に関する教育を受けた。参加者の平均年齢は64歳であった。1件の研究に関しては、参加者が戦争の退役軍人で構成されており、そのほとんどが男性だったため、このレビューには女性よりも男性の方が多く含まれていた。参加者は、1つ目の研究ではわずか4週間、2つ目の研究では6ヶ月間、3つ目の研究では4ヶ月間、技術を使用し、12ヶ月後のデータも報告した。これらの研究で使用された技術は、スマートフォンやコンピューターであった。

主要な結果

4週間から6ヶ月間、対面式/デジタル/書面によるサポートを受けた人に比べて、スマート・テクノロジーを受けた人は、自己管理と生活の質の向上、身体活動の増加が見られた。また、慢性閉塞性肺疾患の入院や増悪についても、スマートテクノロジーを使用した人と使用しなかった人では差がなかった。禁煙した人についての情報を提供した研究は1件のみで、2つのグループ間では差はなかった。

エビデンスの質

このレビューに含めることができたのは、バイアスのリスクが高い3件の研究のみであり、解析を実施できたのは、アウトカムのうち2つ(生活の質と身体活動の増加)のみであった。その結果、現在の情報ではスマートテクノロジーが慢性閉塞性肺疾患の人に役立つかどうかは明確には示されてはいないと思われる。我々は慢性閉塞性肺疾患の異なる病期に関連するアウトカムに焦点を当てた質の高いさらなる研究を推奨する。研究者は自己管理の評価方法を明確にし、標準的な試験結果(特に費用)を報告し、行動の変化や治療の影響に関するコメントを提供できるように、少なくとも1年間の追跡調査を含めるべきである。

訳注: 

《実施組織》星 進悦 翻訳、阪野正大 翻訳[2020.05.21]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011425.pub2》

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