レビューの論点:サルブタモールは、一過性頻呼吸の新生児における酸素療法の期間と呼吸補助の必要性を減少させるか?
背景: 新生児の一過性多呼吸(異常に速い呼吸)は、高い呼吸数(1分間に60回を上回る)と呼吸困難の兆候を特徴とし、通常、妊娠34週以降に生まれた乳児では生後2時間以内に出現することが知られている。新生児の一過性の多呼吸は、通常、治療をしなくても改善するが、小児期後半になると肺の喘鳴を伴うことがある。新生児の一過性多呼吸にサルブタモールを使用する考え方は、エピネフリン(アドレナリンとしても知られている)などのβ作動薬と呼ばれる薬が、肺内の小さな空洞(肺胞)からの液体の排出を促進することを示す研究に基づいている。このレビューでは、新生児の一過性多呼吸の管理における水分制限の有効性に関する利用可能なエビデンスを報告し、批判的に分析している。
研究特性:2020年4月までに完了した医学文献検索において、498人の新生児を対象に、サルブタモールとプラセボを比較した7件の臨床試験を特定し、組み入れた。6件の研究では、サルブタモールのネブライザー(薬を細かい霧状にする)による単回投与を評価し、1件の研究では、2種類の投与量を評価した。さらに、現在進行中の5件の研究が見つかった。
主な結果:サルブタモール投与により、酸素療法の期間、多呼吸の期間、持続気道陽圧療法および機械換気の必要性が減少するかどうかは不明である。サルブタモールは入院期間を若干短縮する可能性がある。
エビデンスの確実性 は、結果(評価項目)、入院期間については低度、酸素療法の期間、頻呼吸、持続陽圧呼吸、人工呼吸の必要性については非常に低度であった。入手可能なエビデンスが限定的であり確実性が低いため、サルブタモールが新生児の一過性頻呼吸の治療に安全か有効かを判断することはできなかった。
《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳 [2022.02.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011878.pub3》