脳卒中患者の日常生活動作に対する反復末梢磁気刺激(repetitive peripheral magnetic stimulation:rPMS)

レビューの論点

反復末梢磁気刺激(repetitive peripheral magnetic stimulation:rPMS)は脳卒中後の人の日常活動を向上させるのに有効であるか?

背景

脳卒中は、身体的障害の最も一般的な原因であり、脳の一部への血液供給が遮断されたり、減少したりすることで起こる。脳卒中には、虚血性(血流不足によるもの)と出血性(出血によるもの)の2種類があることが知られている。脳卒中後の上下肢麻痺は、食事、入浴、更衣、歩行などの日常生活動作に問題を生じさせる。脳卒中後の人は、しばしば上下肢のトレーニング、日常動作に重点を置いた運動、適切な歩行補助用具(杖など)といった身体のリハビリテーションが必要である。しかし、有用な治療法は現在限られている。反復末梢磁気刺激(rPMS)は、運動神経の末端枝を刺激して筋収縮を起こすことにより、脳や神経の損傷で筋力が低下した人の動きを改善する非侵襲的治療(身体に器具を挿入しない治療)である。rPMSは筋肉の深層まで浸透し、痛みがほとんどなく、副作用がほとんどないのが特徴である。

検索日

この検索は2021年10月5日現在のものである。

研究の特性

本レビューは2019年に報告されたレビューのアップデート版である。合計139例の参加者を対象としたrPMSの4件のランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のうちの1つに無作為に割り当てる研究)から得られた科学的根拠(エビデンス)を検討した。2件の研究は、rPMSと疑似刺激(微弱の刺激または音のみ)とを比較した。2件の研究は、rPMS+リハビリテーションと疑似刺激+リハビリテーションとを比較した。

主要な結果

脳卒中後の日常生活動作、筋力、上肢機能、痙縮(筋肉の異常な硬直)に対する反復末梢磁気刺激の効果に関しては、ほとんどエビデンスがないことが明らかとなった。今回の結果は、2019年に報告されたレビューと変わらない。1件の試験では、rPMSが上肢の痙縮を低減したと報告されたが、その効果は小さく、依然として有用性は不明である。

エビデンスの質

日常生活動作の改善については、主に1件の研究のサンプルサイズが小さかったため、エビデンスの質は低いと分類した。

'結論

rPMSの使用が、脳卒中後の日常生活動作や機能的能力を向上させるのに有用かどうかは依然として不明である。rPMSの効果を評価するには、多くの参加者を対象としたより多くの試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2022.11.1] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011968.pub4》

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