レビューの論点
経皮的神経電気刺激(Transcutaneous electrical nerve stimulation :TENS)は成人の線維筋痛症による痛みを軽減させるか?
背景
線維筋痛症は長期間にわたる病態で、長期に持続する広範囲な疼痛が全身に及ぶのが特徴である。TENSは2つまたは4つの電極を使って皮膚表面にパルス電流を流す治療であり、疼痛の状態を処置するため使用される。TENSは低価格で、線維筋痛症患者が自分で行うことができ、特に副作用も伴わない。TENSは動作時の疼痛を軽減するので、他の治療に加え患者が日常生活を歩むのに役立つ可能性がある。
試験の特性
2017年1月、315例を調査した臨床試験が8件特定された。TENS単独治療もしくは運動療法との併用治療として、疼痛の部位に無痛の「ピリピリ」感を与えるTENSを組み入れた。全ての試験では、TENSと「偽物」(プラセボまたは偽)のTENS、無治療または薬物や水治療法(水中での治療)などの他の治療法と比較していた。
主要な結果
線維筋痛症の疼痛に対するTENSの有用性について結論を出すには、十分に質の高いエビデンスが見つからなかった。7件の試験がTENSは線維筋痛症関連の疼痛を軽減すると結論したが、試験の質は低く、疼痛の計測結果は一貫性のない報告だった。試験では我々のアウトカムのほとんどを計測していたわけではなかったが、疼痛のどの面(例えば現在の疼痛、覚えている疼痛、疼痛の重症度など)を報告しているのか必ずしも明確ではなかった。小規模な先駆的試験1件でのみ、30分間の単回TENS治療が動作時の疼痛を治療中および治療直後に軽減したことが分かった。しかし、観察した参加者数はあまりに少なく、この効果がより長期のTENS治療コースにわたり維持されるかは明らかにされていない。全体として、TENSが線維筋症痛関連の疼痛を軽減するかどうか判断することは不可能である。重篤な副作用はいずれの試験にもなかった。
エビデンスの質
複数の試験から得られたエビデンスの質を、「非常に低い」、「低い」、「中等度」および「高い」という4つのレベルを使って評価した。質の非常に低いエビデンスは、我々は結果について非常に確信がないという意味である。質の高いエビデンスとは、我々は結果について非常に確信が持てるという意味である。データが不十分なため、エビデンスの質は全体として非常に低かった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD012172.pub2】