レビューの目的
このレビューは、土壌伝播蠕虫感染症の感染予防に関する水・衛生・保健衛生活動の効果を評価したランダム化比較試験(RCT)(参加者を2つ以上の治療群のいずれかに無作為に割り付ける試験)と非ランダム化試験(非RCT)を要約したものである。
土壌伝播蠕虫(STHs)は、腸内寄生虫の一種で、土壌や水源を汚染した人間の糞便中に排泄された感染性卵の摂取や幼虫の経皮(皮膚からの)侵入により人間に感染する。駆虫を行ったとしても、再感染が急速に進むため、補完的な対策なくしては、感染の阻止は難しい。再感染を抑え、病気を減らすためには、安全で十分な水、基本的衛生設備、衛生(WASH)へのアクセスと利用などの環境改善が不可欠と考えられている。
主な結果
このエビデンスは、研究中のWASHの介入がSTH感染をわずかに減少させる可能性があることを示唆している。これらの結果の多くは、治療群と対照群の両方で大量薬剤投与を行った研究であり、大量薬剤投与の適用以上のSTH感染に対するWASHの影響を示している。
本レビューで検討された内容
WASHとSTH感染症を評価するこれまでのレビューは、非実験的な研究に大きく依存している。STH感染を減らすためのWASHプログラムの役割を評価する厳密で実験的なエビデンスを調査した。
レビューの主な結果は何か
2021年10月19日までに関連する研究(発表済み、未発表、出版中、進行中)を科学文献データベースで検索し、合計52,944人を登録した32件の研究(RCT16件、非RCT16件)を特定した。研究中のWASHの介入が、あらゆるSTH感染のわずかな減少につながるかもしれないというエビデンスを発見した。14件のRCTを統合してこの結果を分析したところ、WASHグループの参加者がSTHに感染する確率は対照グループの参加者に比べてわずかに低い(14%)ことが示された。同様に、STH感染の有無を分析するために8件の非RCTを統合したところ、WASHグループの参加者はコントロールグループと比較してSTH感染の確率が29%低いことが示された。個々の虫種に対する WASH の介入を評価する分析を考慮すると、エビデンスは非常に不確かであった。WASH の介入は、鞭虫の感染をほとんどあるいはまったく減少させず、蛔虫と鉤虫の感染をわずかに減少させる結果になる可能性があった。感染強度に関するデータ(例:糞便中卵数)は、研究間で様々な方法で報告されており、このアウトカムに関する結果を統合することができない。
このレビューの更新状況
エビデンスは2021年10月19日までのものである。
《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳 [2022.07.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012199.pub2》