本レビューの目的
このコクランレビューの目的は、特定の種類の照明が昼間の労働者の注意力と気分の状態を変化させるかどうかを調べることであった。
この疑問を取り上げた5件の研究を収集し、分析した。
要点
白色光は、技術的には相関色温度が高い光として知られているが、昼間に働く労働者の注意力を改善する可能性があるものの、気分は改善しない。白色光は、刺激や目の不快感、頭痛などの症状がより少ないかもしれない。職場で直接照明と間接照明の比率を変更しても、注意力や気分に影響を与えない。青色に富んだ光を発するLED(発光ダイオード)を搭載した眼鏡は、労働者の注意力と気分を改善する可能性がある。季節性うつと診断するほど重くはない症状を呈している人々において、午後明るい光に照らされることは、午前中に明るい光に照らされれるのと同様に、注意力と気分の状態を改善する。すべての結果が低度または非常に低い質のエビデンスに基づいているため、依然として追加の研究が必要である。
本レビューで検討された内容
光は、睡眠の調節などの多くの生物学的機能において重要であり、人々の気分の状態や注意力に影響を与える可能性がある。ほとんどの時間を屋内で過ごす昼間の労働者は、昼間に浴びる光のレベルが低くなる可能性がある。その結果、注意力の低下や気分障害をきたしている可能性がある。
屋内で作業する昼間の労働者の注意力と気分に対する、あらゆるタイプの照明の影響を調査した研究のデータを分析した。さまざまな種類の照明には、暖色光(電球色など)と比較した白色光、さまざまなレベルの光度、個々人を照らす照明、または日光を浴びることを含む。
主な結果
282人の参加者を含む5件の研究を組み込んだ。参加者はオフィスと病院で働く労働者である。2件の研究では白色光の影響を調査し、1件の研究では間接照明に焦点を当てていた。残る2件の研究は、特別な眼鏡または光源(中にライトが入った、側面が半透明のガラスかプラスチックでできた平坦なボックス)を使用して、個別に光にさらされた時の効果を調べていた。
白色光は、注意力を改善するかもしれないが気分の状態は改善しない。刺激や目の不快感、頭痛などの症状は少ないかもしれない。これらの研究結果は、業界が資金援助をした2件の研究に基づいている。
職場で直接照明と間接照明の比率を変更しても、注意力や気分に影響を与えない。
LEDが取り付けられた眼鏡によってさらされる青色に富んだ光は、注意力と気分を向上させる可能性がある。
季節性うつ病と診断するほど重くはない症状を呈している人において、午後に光源を使って明るい光を個人的に浴びることで、午前中に明るい光を個人的に浴びるのと同様に、注意力と気分が改善されることがある。
すべての研究結果は、質の低いまたは非常に質の低いエビデンスに基づいており(研究数および参加者数が少なく、研究方法に問題があるため)、更なる研究が依然として必要である。
光度(光の強さ)、光の色と光度の組み合わせ、または日光を浴びることの影響を研究した研究は同定できなかった。
レビューの更新状況
2018年1月17日までの研究を検索した。
《実施組織》杉山伸子 増澤祐子 翻訳[2020.5.21]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012243.pub2》