心臓・循環器系疾患の予防と治療のための多価不飽和脂肪酸

レビューの論点

死亡と心臓発作、脳卒中を含む心臓・循環器系疾患(心血管疾患)に対し、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids :PUFA)の摂取量増加による効果を検証したランダム化比較試験(参加者がいずれの治療法にも割り付けられる等しいチャンスがある試験)をレビューした。

背景

我々はPUFAを通常の食事で食べているが、PUFAの摂取量は様々である。PUFAの摂取量を増やすことにより、血中コレステロールを減らすことができ、特に飽和脂肪(肉やチーズなどの動物性脂肪)の代わりにPUFAを食べれば、心血管疾患がより発症しにくい可能性があるというエビデンスもある。しかし、PUFAをより多く食べれば体重が増加し、オメガ6脂肪酸(PUFAの1成分)が炎症を強めて心血管リスクを増加させる可能性がある。 心血管疾患または他の健康上のアウトカムに対して、PUFAの摂取増加が有益か有害であるかのエビデンスは決定的でない。

試験の特性

本コクラン・レビューのエビデンスは、2017年4月27日現在のものである。24,272例の参加者を対象に、1年~8年間ランダム化比較試験を行った49件の試験を組み入れた。これらの試験は、心血管疾患と死亡に対して、PUFAをより多く食べる場合とあまり食べない場合とを比較した。12件の試験は非常に信頼性が高かった(全体的にバイアスのリスクが低かった)。参加者は男女、既存疾患があるものもいればないものもいた。試験は北アメリカ、アジア、ヨーロッパおよびオーストラリアで実施され、16件が政府あるいは慈善事業団体のみから資金を得ていた。

主要な結果

PUFAの増量は、死亡のリスクに対してほとんどまたは全く差がなく(有害でも有益でもない)(中程度の質のエビデンス)、心血管疾患による死亡のリスクに対してもほとんどまたは全く差がなかった(低品質のエビデンス)。しかし、PUFAの増量は、心臓疾患イベントのリスクと心臓・脳卒中両イベントのリスクをわずかに減らすかもしれない(中程度の質のエビデンス)。1人の心臓疾患イベントの発症を防止するには53人がPUFAをより多く食べる必要があり、1人の心臓または脳卒中イベントの発症防止には63人が必要となる。PUFAの増量により心臓疾患および脳卒中による死亡のリスクがごくわずかに減る可能性があるが、有害の可能性もある(質の低いエビデンス)。PUFAは血液中に循環する脂肪をわずかに減らす可能性がある(トリグリセリド、中程度の質のエビデンス。他の脂質や脂肪蓄積に影響を与えることはない)。上記のエビデンスは、主に高所得国に住む男性が参加した食事指導の試験から得ている。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD012345.pub3】

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