このレビューの目的は何か?
このレビューの目的は、倫理的ケース介入(ethical case intervention)が患者のケアを改善できるかどうかを調べることであった。倫理的ケース介入(例えば、倫理委員会、道徳的なケースの審議〔MCD:Moral Case Deliberation〕)では、患者のケアを取り巻く状況(コンテキスト)内で発生する倫理的葛藤を特定し、分析する。倫理的葛藤が生じる場合がある状況の典型的な例は、治療の提供や制限が患者の意思または患者の福利(またはその両方)と一致しているかどうかが不確かな場合である。倫理的ケース介入では、倫理の専門家が患者のケア(特定の患者の状況)の倫理的課題について、患者とその家族だけでなく、患者のケアに責任を持つ様々な医療専門家と議論する。倫理的ケース介入の目的は、臨床現場での意思決定を支援することである。コクランの研究者は、倫理的ケース介入が患者のケアを改善するかどうかを判断するために、関連するすべての研究を収集、分析し、6つの論文で公表された4つの関連研究を見つけた。
要点
エビデンスの確実性が非常に低度であったため、倫理的ケース介入により、治療について決定を下す必要のある人の意思決定の葛藤が軽減されたかどうかは不明であった。倫理的ケース介入が道徳的苦痛、意思決定への患者の関与、患者の生活の質、または倫理的能力に及ぼす影響を報告する研究は見つからなかった。エビデンスの確実性が非常に低度であったため、倫理的ケース介入がケアの満足度を高めるかどうかは不明であった。倫理的ケース介入を評価するには、より多くの質の高い研究が必要である。
このレビューで何が研究されたか?
倫理的ケース介入が医療のケア(ヘルスケア)を改善するかどうかを評価するために、意思決定に影響を受ける参加者の意思決定の葛藤、道徳的苦痛の軽減、意思決定への患者の関与、患者の生活の質を主な結果基準(アウトカム)として選んだ。
このレビューの主な結果は何か?
レビューの著者らは、6つの論文で結果が公表されている4つの関連研究を見つけた。すべての研究は、集中治療室での倫理的ケース介入と通常のケアを比較した。研究では、倫理的ケース介入の2つの異なるモデル、すなわち、積極的な倫理相談と依頼に基づく倫理相談を使用した。積極的な倫理相談では、依頼されなくても倫理の専門家自身が潜在的な倫理的葛藤を特定したり、潜在的な葛藤に応じて倫理相談が提供されたりした。依頼に基づく倫理相談では、専門家、患者、またはその家族が、特定の倫理的葛藤を解決するために、倫理相談を依頼する。すべての研究は公的資金を得ており、1つは民間からの追加資金を得ていた。
積極的な倫理相談については、3つの研究が報告していた。意思決定の葛藤、道徳的苦痛、意思決定への患者の関与、患者の生活の質、倫理的能力に関するデータは見つからなかった。1つの研究では、ケアに対する満足度を評価した。エビデンスの確実性が非常に低度であったため、積極的な倫理相談がケアの満足度を高めたかどうかは不明であった。
1つの研究では、依頼に基づく倫理相談について報告した。この研究では、意思決定の葛藤を軽減するための間接的な基準として、患者のケアに関する意思決定への総意(コンセンサス)のレベルを評価した。エビデンスの確実性が非常に低度であったため、依頼に基づく倫理相談が総意(コンセンサス)を高め、その結果、意思決定の葛藤を軽減することができたかどうかは不明であった。道徳的苦痛、意思決定への患者の関与、患者の生活の質、倫理的能力に関するデータは見つからなかった。
このレビューの更新状況
レビューの著者らは2018年9月までに公表された研究を検索した。
《実施組織》木下恵里 翻訳、阪野正大 監訳[2020.07.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012636.pub2》