レビューの論点
本レビューでは、ヨガが女性の尿失禁の治療に有用かどうかを検討した。今回、ヨガを無治療および他の失禁治療と比較した。また、ヨガおよび他治療法の併用を他治療法単独と比較した。尿失禁の症状、生活の質および有害作用に注目した。さらに、ヨガ治療の費用対効果についての情報も検索した。
背景
中年以上の女性最大15%が尿失禁の可能性がある。失禁は切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁に分類できる。前者は、突然の強い尿意を伴う尿の不随意の排出として定義される。後者は、くしゃみなどの活動が尿の不随意の漏れを引き起こす。どちらのタイプも、生活の質ならびに社会的、生理学的および性的機能にマイナスの影響を与える可能性がある。失禁の治療は通常、カフェイン摂取の減量などのライフスタイル(あるいは「生活習慣」)の変化、膀胱トレーニングまたは骨盤底筋運動などの行動的介入の指導から始まる。しかし、多くの女性は、ヨガなどの追加治療に関心がある。ヨガは哲学体系で、古代インドに起源をもつライフスタイル(あるいは「生活習慣」)および身体活動である。
本レビューの更新状況
本エビデンスは2018年6月21日現在のものである。
試験の特性
本レビューでは、合計女性49名を対象とした2つの研究が同定された。1つは、腹圧性または切迫性尿失禁の女性に対する、ヨガと待機リスト(治療の延期)を比較した6週間の試験であった。もう1つは、切迫尿失禁の女性に対する、ヨガとマインドフルネスストレス低減法(mindfulness-based stress reduction ;MBSR)を比較した8週間の試験であった。さらに、ヨガとストレッチの比較を目的とした、女性50名が参加した現在進行中の試験を同定した。この試験は、結果が報告されてから含める予定である。
主要な結果
ヨガと待機リストを比較する試験は、治癒を報告する女性の数が報告されなかったが、症状、状態特有の生活の質および有害作用については報告されていた。この比較は全般的にはヨガの介入に有利な結果となったが、科学的根拠(エビデンス)の確実性が非常に低いため、ヨガが尿失禁を改善するかどうかは不明である。有害事象を報告したが女性の数は、群間では差はなく、重篤な有害事象も報告されていなかったが、エビデンスの確実性が非常に低いため、ヨガが有害事象を増やすかどうかは不明である。
ヨガとMBSRを比較する試験では、症状および状態特有の生活の質の報告はあったが、治癒を報告する女性の数の報告はなかった。この比較は全般的にMBSR介入に有利な結果となったが、エビデンスの確実性が非常に低いため、ヨガが尿失禁を改善するかどうかは不明である。有害事象についての情報はなかった。
尿失禁に対するヨガの費用対効果についての情報はなかった。
エビデンスの質
女性の尿失禁に対するヨガ治療についてのエビデンスをいくつか特定したが、今回対象とした試験は規模が非常に小さく、実施方法について問題があるため、結果に対する信頼度は低い。この治療の特質上、ヨガと待機リストを比較する試験の参加者および試験実施者は、参加者が割り付けられた群を知っており、ヨガ群の女性がヨガは有用であると期待して一部の有益性を報告した可能性がある。ヨガとMBSRを比較した試験は、失禁治療としてヨガを検証することを意図していなかった。この試験は治療としてのMBSRを調べており、ヨガ教室を利用して、比較群の女性が試験実施者から確実に注目されるようにした。さらに、ヨガとMBSRを比較する試験は女性全員についての結果を収集しておらず、結果を報告した女性は、結果を報告しなかった女性よりも良い、または悪い結果であった可能性がある。尿失禁女性にヨガが有用かどうかを判断するための優良な質のエビデンスは、現在は不十分である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012668.pub2》