レビューの論点
主にうつ病の治療に用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が、自分が望むよりも早く射精してしまう男性の射精するまでの時間を遅らせるのに役立つかどうかを調べた。
背景
早漏とは、男性によく見られる問題で、性交の際に男性自身やそのパートナーが望むよりも早く射精が起こってしまうことで、不幸せに感じることや人間関係の問題の原因となりうる。SSRIは、早漏の治療薬としてよく投与される薬だが、実際にどの程度の効果があるのか、どんな有害作用があるのかはわかっていない。
研究の特徴
2020年5月1日までのエビデンスを検索した。8,254人の男性を対象とした31件の研究が特定された。この研究では、SSRIとプラセボ(不活性成分しか含まない錠剤)を比較した。
主な結果
SSRIは、プラセボと比較して、早漏の男性の性的満足度をおそらく改善する。また、射精に対するコントロール感が向上し、不幸せ感や人間関係の問題を減らせるだろう。しかしながら、副作用が増える可能性もある。
エビデンスの質
男性が治療によって感じる変化、性交における幸福感、射精に対するコントロール感がSSRIで改善するかについて、エビデンスの質は中等度であると判断した。また、薬の副作用についても、エビデンスの質は中等度であった。これらの結果は、私たちの評価が真実に近いものである可能性を示している。一方、人間関係の問題や射精までの時間の改善に関するエビデンスは、確実性が低い。つまり、この2つの懸念に対する治療の真の効果は、今回のレビューの結果とは異なる可能性がある。これは、レビューに組み込んだ研究の弱さやばらつきが原因かもしれない。
《実施組織》 杉山伸子、阪野正大 翻訳 [2021.12.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012799.pub2》