医療従事者間のコミュニケーションとケアマネジメントを促進するためのモバイル技術の活用

本レビューの目的

私たちは、医療従事者が携帯電話などのモバイルデバイスを介したmヘルス(モバイルヘルス)サービスを利用して他の医療従事者とコミュニケーションをとることで、ヘルスケアへの迅速なアクセスが可能になり、患者の健康状態を改善できるかどうかを調べることを目的とした。関連するすべての研究を収集・分析し、19件が該当した。

要点

モバイル技術はおそらく通常のケアに比べて、医療を提供するまでの時間や対面受診の回数をわずかに減少させる可能性があり、また糖尿病患者の眼検査など、いくつかの状況で臨床検査を受ける人の数を増加させる可能性がある。モバイル技術は、医療従事者や参加者の満足度、健康状態、ウェルビーイングにはほとんど影響を与えないかもしれない。

本レビューで検討された内容

多くの医療従事者は一人で仕事をしていたり、同僚や専門家との接触が少ない。これは、地方や低所得国の医療従事者に共通する問題である。

この問題の解決策の1つとして考えられるのは、医療従事者が違う場所にいる同僚から助けを得ることができるモバイル技術を利用して、医療従事者にアドバイスやサポートを提供することである。例えば、医療従事者は、電話やインターネットを通じて、より経験豊富な専門家や同僚に連絡を取ることができる。また医療従事者は、携帯電話やタブレットなどのモバイル端末を利用することもできる。仕事の一環として携帯電話やその他のデバイスを使用する医療従事者が増えているため、mヘルス(モバイルヘルス)サービスを取り入れることは特に容易になるだろう。

主な結果

医療ケアを必要とする5766人以上を含む関連研究が19件見つかった。16件の研究は高所得国の研究であった。2つの研究では、技術的な課題が報告されたが、問題点はほとんど報告されなかった。

プライマリ・ヘルスケア従事者がモバイル技術を使って病院の専門家に相談することにより

- 慢性腎疾患患者がガイドラインに従って治療されたかどうかや、乾癬患者の健康状態や生活の質には、おそらくほとんど差ががないようである。

- 糖尿病患者が網膜症スクリーニング検査を受ける可能性や、何らかの症状に対する超音波検査を受ける可能性を高め、また皮膚疾患をもつ人のクリニックへの紹介や受診、別の健康問題のフォローアップのためのクリニックへの紹介を減らすかもしれない。

- 医療従事者や患者の満足度、あるいは医療を提供するための費用にはほとんど差がないようである。

救急医がモバイル技術を使って病院の専門家に相談することにより

- 患者はやや迅速に対応されているようである。

救急医のガイドライン遵守度、患者の健康とウェルビーイング、医療従事者や患者の満足度、コストに対するモバイル技術の効果を調べた研究は見つからなかった。

地域医療や在宅医療従事者がモバイル技術を使って診療所のスタッフに相談することにより

- 新たな糖尿病による足部潰瘍をもつ患者が看護師に診てもらう回数や、経管栄養を受けている高齢者が看護師に診てもらう回数、入院回数にはほとんど差がないようである。

- HIVや糖尿病をもつ人の死亡者数に違いはないかもしれない;また、関節リウマチを持つ人々の健康状態や生活の質にもほとんど、あるいは全く差はないようである。

- 糖尿病やリウマチ性関節炎を持つ人々の満足度には、ほとんど、あるいは全く差はないようである。

地域医療従事者がガイドラインに従っているかどうか、人々が医療を受けられるまでの時間、医療従事者の満足度、コスト、技術的な課題について、モバイル技術の効果を調べた研究は見つからなかった。

本レビューの更新状況

本レビューは2019年6月22日までのものである。

訳注: 

《実施組織》 季律、瀬戸屋希 翻訳[2020.08.21]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012927.pub2》

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