レビューの論点
後腟壁の臓器脱に対してどの外科的介入が最善の成績をもたらすのか。また、それぞれの介入による合併症は何か。
背景
後腟壁脱とは、直腸または小腸が下降することであり、その結果、腟の後壁が腟腔内に向かって膨隆する。この状態は、骨盤底筋群体操や腟に挿入するペッサリーで保存的に治療することができるが、手術的な治療も可能である。現在、後腟壁の脱出に対して、いくつかの異なる手術方法が存在する。このレビューは、これらの異なる手術について有効性と安全性の面での比較を目的としている。後腟壁の脱出に対する手術は、経直腸的あるいは経腟的に行われる。種々の経腟的な手術では、後腟壁全体の正中線上で強固な筋膜層を復元させる(正中線筋膜形成)か、この強固な筋膜層の中で欠損している部分を同定して修復する(部位特異的な修復)を目指す。修復を行う際には、女性自身の組織だけを用いるほか、グラフトを追加することも可能である。このグラフトには、吸収されるもの、生物学的なもの、あるいは合成されたものがある。
研究の特性
このレビューでは、後腟壁脱のある女性1099人を含む10のランダム化比較試験を同定した。4つの研究では、経肛門的修復と経腟的修復を比較していた。1つの研究では、経腟的に自家組織(手術を受ける女性自身の組織)を用いた2つの異なる術式、すなわち、部位特異的な修復と正中線上筋膜形成術の比較をしていた。腟形成術における吸収性グラフトと自家組織の比較をしている研究が1つあった。生物学的なグラフトと自家組織を比較した研究が4つ、合成されたグラフトと自家組織を比較した研究が1つあった。本エビデンスは2017年4月現在のものである。
主要な結果
後腟壁の脱出に対して、経腟的な修復の方が経肛門的な方法より有効かもしれない。しかしながら、有害事象に関するデータはわずかしかない。他の手術方法と比較した有効性や安全性の結論を下すには、エビデンスは不十分だった。後腟壁の修復時にメッシュや生物学的なグラフトを用いることを支持するエビデンスは得られなかった。いくつかの経腟的メッシュのキット商品が市場から撤退したことで、このレビューの結果を一般化させるのに制限がかかるかもしれない。
エビデンスの質
エビデンスの質は、非常に低度から中程度であった。エビデンスの質に関する主な限界は、バイアスが存在する可能性(主に実施、検出、症例減少バイアスについて)、不正確性(全体的にサンプルサイズが小さく、イベント発生率が低いことに関連したもの)である。
《実施組織》杉山伸子 内藤未帆 翻訳[2018.07.03] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012975》