原発性副甲状腺機能亢進症の成人に対する副甲状腺摘出術

原発性副甲状腺機能亢進症とは

原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)は、副甲状腺(首の甲状腺の近くまたは甲状腺上にある4種類の腺)が肥大して、副甲状腺ホルモンを過剰に分泌する疾患である。この病気は成人の1%にみられる。副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、体内のカルシウム濃度が乱れて、骨粗しょう症(骨が弱くなる健康状態)や骨折、慢性腎臓病、心血管疾患、認知機能障害(精神能力の低下)など、さまざまな健康問題につながり、健康関連のQOL(生活の質)を低下させる。

副甲状腺機能亢進症の治療

副甲状腺摘出術(異常な副甲状腺を外科的に摘出する)は、PHPTの患者に対する確立された治療法のひとつである。副甲状腺摘出術は、PHPTを治癒させて、望ましくない合併症を改善することが期待されている。

知りたかったこと

副甲状腺摘出術が、症状のない軽度のPHPTを治癒させ、骨粗しょう症、骨密度低下、腎結石、腎臓病、心血管疾患(心臓や血管に影響を及ぼす疾患)、認知機能障害などの疾患に関連する合併症を改善するために、内科的治療や単純な観察よりも優れているかどうかを知りたかった。また、副甲状腺摘出術に好ましくない影響があるかどうか、PHPT患者の健康関連QOLが改善されるかどうかも明らかにしたかった。

実施したこと

PHPTの成人患者を対象に、副甲状腺摘出術を非外科的治療法と比較検討したランダム化比較試験(RCT)を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスの確実性を評価した。

わかったこと

RCT 8件のみが見つかり、成人433人が登録していた。合計164人の成人が副甲状腺摘出術を受け、163人(99%)が6か月から24か月後に治癒していた。内科的治療や単純な経過観察に比べ、副甲状腺摘出術はおそらく治癒率を大きく向上させる。骨粗しょう症および心血管疾患に対する副甲状腺摘出術の効果についての情報はない。しかし、本レビューの対象とした研究では、そのような疾患に密接に関連する評価が報告されている。副甲状腺摘出術は、1〜2年後には脊椎下部と股関節の骨密度にほとんどまたは全く影響を与えないかもしれないが、その結果については非常に不確かである。副甲状腺摘出術が左室駆出率(1回の心拍で左心室から出て行く血液の割合)に及ぼす影響に関するエビデンスも非常に不確かであった。副甲状腺摘出術は、経過観察と比較して、望ましくない重症イベントや血中カルシウム濃度の異常な高値を正常にするための入院の発生にほとんどまたは全く影響を与えないと考えられる。副甲状腺摘出術が原因を問わず死亡に及ぼす影響に関するエビデンスは、非常に不確かである。最後に、3件のRCTが健康関連QOLに関する結果を報告している。結果は大きく異なっており、経過観察に比べて副甲状腺摘出術が健康関連QOLに及ぼす影響については不確かである。

エビデンスの限界

本レビューで検討したRCTの報告には、その方法が信頼できるものであることを証明するのに十分な情報が含まれていなかったため、治癒率に関するエビデンスの信頼度は中等度である。一方、その他の結果については、方法が信頼できない可能性があること、研究がPHPTの合併症を直接評価していないこと、登録人数が少ないことなどから、ほとんどまたは非常に信頼できない。

このレビューの更新状況

エビデンスは2021年11月26日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、ギボンズ京子 翻訳[2023.09.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013035.pub2》

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