レビューの論点: ビタミンDのサプリメントは、母乳栄養の乳児やその母親のビタミンD不足を予防し、骨の健康を増進させるのか?
背景: 乳児のビタミンD欠乏症は世界的に見ても一般的であり、色素沈着、覆いなどによる遮光や、日光浴の回避、居住地の緯度などによりリスクが高くなる。ビタミンDは骨の健康に重要で、栄養不足によるくる病や骨折の予防に役立つ。母乳ではビタミンDの濃度が低いため、母乳のみで育てられている乳児はビタミンDの濃度が低くなるリスクがある。
研究特性: エビデンスは2020年5月時点の最新のものである。2837人の母子ペアを対象とした19件の研究で、乳児へのビタミンD投与を評価した(9件の研究)もの、母乳育児中の母親への投与(8件の研究)を評価したもの、乳児と母乳育児中の母親への投与(6件の研究)を評価したものを確認した。乳児に与えられたビタミンDと、乳児が日光を浴びる期間を比較した研究はなかった。
主要な結果: 母乳育児中の乳児に対しては、ビタミンDサプリメントはビタミンDレベルを上昇させ、軽度のビタミンD低下の発生率を低下させる可能性があるが、ビタミンD欠乏症の減少や骨の健康不良の徴候(骨ミネラル含有量の低下、栄養性くる病や骨折)の減少があるかどうかを判断するための情報は不十分であった。ビタミンD欠乏症のリスクが高い母乳育児の乳児には、母親のビタミンD補給により乳児のビタミンD濃度が上昇し、ビタミンD欠乏症を予防できる可能性がある。骨の健康に効果があるかどうかの情報が少なかった。ビタミンD欠乏症のリスクが高い集団で、ビタミンD欠乏症を予防するためには、母乳育児中の母親へのビタミンD補給よりも、乳児へのビタミンD補給の方が良いかもしれない。しかし、骨の健康状態を示すマーカーについては、エビデンスが非常に不確かである。母親に高用量のサプリメント(1日あたり≥4000 IU)を投与することは、1日あたり400 IUの乳児サプリメントを与えるのと同様の乳児ビタミンDレベルを達成した。
エビデンスの確実性: ビタミンD欠乏症のリスクが低い集団における母乳育児中の母親へのビタミンDの補充や乳児への補充については、現在のところエビデンスは非常に不確実である。ビタミンD欠乏症のリスクが高い集団では、ビタミンD 400 IU/日を乳児に投与するか、母乳育児中の母親にそれ以上の量を投与することでビタミンD欠乏症を予防できる可能性があるが、骨の健康への影響は明らかではないという確信性の低いエビデンスがある。
《実施組織》 小林絵里子、阪野正大 翻訳[2020.02.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013046.pub2》