背景
くも膜下出血は、脳の周囲の空間に出血して起こる脳卒中の一種で、毎年、人口10万人あたり9人が発症している。くも膜下出血の死亡率(死亡)は30%から45%で、生存者の20%は日常生活動作に援助が必要な状態になる。現在、短期的な治療としては、血圧を変化させて、高血圧を誘発する(つまり血圧を上げる)か、血圧を下げるかのいずれかが考えられるが、急性くも膜下出血の人における血圧変化の有益性と有害性については不明である。
レビューの論点
本レビューでは、急性くも膜下出血患者の血圧を変化させることの有益性と有害性を検討した。
検索日
科学的なデータベースを使用して、開始から2020年9月までの期間で検索を行った。
研究の特性
急性くも膜下出血患者の血圧変化を評価したランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに無作為に分けられる試験)が3件見つかった。61人が参加した2件のランダム化比較試験では、高血圧の誘発をプラセボ(偽治療)または無治療と比較した。224人が参加した1件のランダム化比較試験では、血圧の低下とプラセボ(偽治療)を比較した。試験の逐次解析を用いて、重要な治療効果を検討するために必要な研究参加者数(情報量)を推定した。試験の逐次解析では、すべての治療効果について情報が不足していた。すべての試験はバイアスのリスクが高く、結果については非常に確信が持てなかった。
主要な結果と結論
急性くも膜下出血の人に高血圧を誘発したり、血圧を下げることに対する重要な治療効果についての情報が不足している。そのため、有益な効果と有害な効果を十分に評価することができなかった。急性くも膜下出血患者に対する血圧変化の効果を評価し、死亡率、重篤な副作用、再出血、遅発性脳虚血(脳の血流低下)、生活の質(QOL)、水頭症などの患者にとって重要なアウトカムを報告するランダム化比較試験が早急に必要である。
《実施組織》堺琴美 冨成麻帆 翻訳[2021.12.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013096.pub2》