レビューの論点
喘息患者に対するスタチンの効果についてのエビデンスをレビューした。
背景
喘息は一般的な慢性(持続性)気道疾患である。喘息は、肺の炎症と気管支収縮(花粉や冷気などの発病因子に反応して肺の内部に存在する微細な管が締め付けられること)によって引き起こされる。炎症や気管支収縮により、気流の閉塞(狭窄・閉塞)を起こす。喘息の人は、咳の有無にかかわらず、喘鳴、呼吸困難、胸部圧迫感を繰り返して経験する。
スタチンは抗炎症薬である。スタチンの抗炎症作用が喘息を和らげる効果があるという説があるので、スタチンのエビデンスをレビューした。私たちは、スタチン療法を使用することが、通常の治療のみや異なる種類のスタチン(アトルバスタチン、シンバスタチン)などの他の選択肢と比べて良いのか悪いのかを明らかにすることを目的にした。
研究の特性
喘息の成人60人を対象に、アトルバスタチン(スタチン薬の一種)とプラセボ(ダミー治療)を12週間にわたって評価した試験は1件のみであった。これらの人たちは、治療を開始したときに慢性喘息(持続する気道疾患)を患っていた。
主な結果
スタチン(アトルバスタチン)は喘息患者の肺機能の明確な改善には至らなかったが、プラセボよりも喘息のコントロールに優れている可能性があることを明らかにした。しかし、試験は1件しかないので、確固たる結論を出すことはできなかった。
また、この試験では、副作用や重篤な有害事象については報告されていなかった。そのため、スタチンが喘息の緩和に有益な効果をもたらすのか、あるいは副作用や重篤でない有害事象のリスクを高めるのかは不明である。
エビデンスの質
確実性が非常に低いエビデンスであったので、スタチンが有用かどうか、喘息の人が使用しても安全かどうか、確固たる結論を出すことはできなかった。
このエビデンスは、2020年2月7日現在のものである。
《実施組織》 季律、阪野正大 翻訳[2020.08.11] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013268.pub2》