要点
このレビューに含まれる単一の症状または徴候は、COVID-19を正確に診断することができないという結果を示唆している。
- 味覚や嗅覚の喪失は、COVID-19の存在を示す「赤信号」である可能性がある。咳や発熱は、COVID-19である可能性のある人を特定するのに有効かもしれない。これらの症状がある場合には、さらなる検査を促すのに役立つかもしれない。
- 最近の接触歴や旅行歴、ワクチン接種の有無など、他の情報と症状や徴候の組み合わせについて、小児や65歳以上の成人を対象に、さらに研究を進める必要がある。
COVID-19の症状や兆候は?
症状は患者が経験するものである。軽度のCOVID-19の患者は、咳、喉の痛み、高熱、下痢、頭痛、筋肉や関節の痛み、倦怠感、嗅覚や味覚の喪失などを経験することがある。
徴候は、医療従事者は診察時に測定する。このレビューで調べたCOVID-19の徴候には、肺音、血圧、血中酸素濃度、心拍数が含まれている。
COVID-19の症状や徴候は、自分や接触した人が自宅で隔離すべきか、ベッドサイドで行われる(小型の医療機器で行われる)迅速簡易検査やPCR(実験室ベースのテスト)で検査すべきか、入院すべきかを知るために重要かもしれない。
何を知りたかったのか?
COVID-19の症状や徴候は様々で、COVID-19だけでなく、他の病気を示す場合もある。診察で得られた症状や徴候をもとに、COVID-19の診断が、プライマリ・ケアや病院でどの程度正確に行われているのかを知りたかった。COVID-19が疑われ、医師、外来検査センター、病院を受診した人を対象とした。
このレビューで行ったことは何か?
COVID-19を診断するための症状や徴候の精度を評価する研究を検索した。一般診療所、外来検査センター、病院の外来で実施されたものに限定した。救急外来などを通じて入院した際に徴候や症状が記録されている場合のみ、入院患者を対象とした研究を対象とした。
レビューの結果
このレビューでは、52,608名の参加者を含む42件の研究を採用した。これらの研究では、96の個別の、あるいは複合的な症状や徴候を評価している。救急部または外来のCOVID-19テストセンターで実施された35件の研究(46,878人),一般診療所での3件の研究(1,230人),小児病院での2件の研究(入院・外来患者493人),老人ホームでの2件の研究(4,007人)であった.これらの研究は世界18か国で実施された。ヨーロッパで23件、北米で8件、アジアで5件、南米とオーストラリアで3件の研究が実施された。アフリカで実施された研究は見つからなかった。3件は子ども向けで、65歳以上の大人向けは1件だけであった。
COVID-19では軽症と重症の明確な区別がつかなかったので、軽症、中等症、重症の結果を一緒に提示する。
個々の徴候を診断テストとして報告した研究はほとんどないため、主に症状の診断的価値に着目している。最も多く報告された症状は、咳、発熱、息切れ、喉の痛みであった。
今回のレビューによると、COVID-19が疑われる1,000人のグループのうち、270人(27%)が実際にCOVID-19であり、約567人が咳をしていることになる。この567人のうち、168人は実際にはCOVID-19に罹患しているだろう。咳をしていない433人のうち、102人はCOVID-19に罹患しているだろう。同じ1,000人の中で283人の人が熱を出すだろう。この283人のうち、102人は実際にはCOVID-19に罹患しているだろう。熱のない717人の患者のうち、168人がCOVID-19に罹患しているだろう。
嗅覚や味覚を失った人は、そうでない人に比べて5倍もCOVID-19にかかりやすいと言われている。
その他の症状、例えば喉の痛みや鼻水などは、COVID-19以外の感染症である可能性が高い。上記と同じ1,000人では、約362人がのどを痛めていることになる。このうち、84人は実際にはCOVID-19に罹患しているだろう。喉の痛みがない638人の患者のうち、186人がCOVID-19に罹患しているだろう。鼻水についても、同様の数値が出ている。
エビデンスの限界
このアップデートされたレビューの結果は、より質の高い研究が含まれているため、以前のバージョンよりも信頼性が高くなっている。しかし、個々の症状の正確さは研究によって異なり、発熱や咳などの呼吸器症状などの診断価値は、ほとんどの研究がこれらの症状があるために意図的に参加者を集めているため、まだ過大評価されているかもしれない。
この結果は、COVID-19の軽度、中等度、重度の人たちを明確に区別しているわけではあない。小児や高齢者におけるCOVID-19の症状別診断について調査した研究はわずかであった。
本レビューの更新状況
本レビューは、前回のレビューを更新したものである。本エビデンスは2021年6月現在のものである。
《実施組織》 阪野正大 翻訳、井村春樹 監訳 [2022.05.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013665.pub3》