神経内分泌腫瘍の治療選択肢

レビューの論点

消化管および膵臓の神経内分泌腫瘍(NET)に対する治療法の安全性と有効性に関するエビデンスをレビューし、治療法の順位付けを行なった。

背景

NETは、多様な希少がんの総称であり、体のどこにでも発生する可能性がある。とはいえ、ほとんどのNETが消化管または膵臓から発生する。NETには多くの種類があり、増殖速度や症状もさまざまである。過剰なホルモンを分泌するNETがある一方、ホルモンを分泌しない、あるいは分泌しても症状が出るほどではないNETもある。治療の選択肢およびその組み合わせや順序は、腫瘍の種類、部位、悪性度、過剰なホルモン産生の有無によって異なる。

これまで、NETに対してどの治療が最も効果的で、有害事象が最も少ないかについて、明確な推奨ができなかった。そこで、入手可能な情報に基づき、統計的手法を用いてすべての治療法を相互に比較した。

研究の特性

2020年12月11日までに発表されたランダム化比較試験(RCT、参加者を治療群に無作為に割り当てる研究)22件、合計4,299人を対象とした。研究間では、腫瘍の部位(消化管および膵臓)、腫瘍の種類、対象患者数、治療法、研究の質に差があった。

主な結果

本解析では、消化管および膵臓NETのいずれでも、全般的にソマトスタチン様薬を含む併用療法の優位性が示唆された。しかし、膵臓NETでは、エベロリムスが他の治療法と比較して最もエビデンスの確実性が高い治療法であった。さらに、今回の結果から、NETの治療は有害事象のリスクや生活の質(QOL)への影響が多岐にわたることが示された。NETは初診時には病状が進行していることが多く、治療は最終的な治癒ではなく、病勢コントロールや腫瘍の縮小を目的として行われることが多いため、治療による有害事象やQOLは重要な検討事項となる。

エビデンスの質

異なる治療法について、エビデンスの確実性を高~低で評価した。併用療法を含めた治療法の総合的な順位付けはできなかった。十分な情報に基づいた意思決定を行うためには、有害事象のリスクやQOLへの影響など、各治療法の長所と短所を互いにバランスよく考慮する必要がある。今回のネットワークメタアナリシス(およびそのもととなったRCT)から得られたエビデンスは、患者中心の評価項目(全生存期間やQOLなど)に関して、特定の治療法(または治療法の組み合わせ)を支持するものではない。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)大澤 朋子 翻訳協力、泉谷 昌志(東京大学医学部付属病院消化器内科)監訳 [2021.12.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD013700.pub2》

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