クロルヘキシジンとその他の消毒液:中心静脈ラインを留置する新生児の感染予防にはどちらが効果的か?

要点:

・ 確固たるエビデンスがないため、新生児の中心静脈ライン挿入時の消毒液として、ポビドンヨード(PI)と比較したアルコール中のクロルヘキシジンの利益とリスクは不明である。

・ 未熟児にポビドンヨードを使用すると、成長と発育に不可欠なホルモンである甲状腺ホルモンのレベルが低下する可能性がある。

・ 研究数が限られており、低・中所得国からの研究が少ないため、エビデンスの確実性と適用可能性に対する信頼性が低い。

中心静脈カテーテルとは何か?

集中治療が必要な赤ちゃんは、中心静脈ラインと呼ばれる特別な細い管(カテーテル)を血管に挿入する必要がある。中心静脈ラインは、投薬や栄養補給など、さまざまな理由で必要とされる。これらの中心静脈ラインは重要だが、さまざまな合併症を引き起こす可能性がある。

カテーテル関連血流感染(CRBSI)と中心静脈ライン関連血流感染(CLABSI)とは何か?

重篤な感染症は、中心静脈ライン挿入に伴う最も頻度の高い合併症のひとつである。中心静脈ラインに起因する、あるいは起因する可能性のある感染は、それぞれCRBSIおよびCLABSIと呼ばれる。これらの感染は、ラインを挿入する前に消毒液を皮膚に使用することで予防できる可能性がある。

何を調査しようとしたのか?

以下の目的にとってどの消毒液が最適なのか知りたかった:
・ CRBSI/CLABSIの予防;

・ 血液中の感染率を低下させる;

・ カテーテル内の細菌の繁殖を防ぐ。

また、これらの消毒薬を使用することで、小さな乳児の皮膚に化学的刺激のリスクが高まるかどうか、あるいはその他の悪影響が生じるかどうかも知りたかった。

本レビューで行ったこと

以下の比較を行った臨床試験を検索した:

・ さまざまな種類の消毒液、または

・ 同じ消毒液の異なる濃度。

その結果を比較、要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

米国、英国、アイルランドで行われた3件の研究があった。これらの研究には466人の赤ちゃんが参加し、新生児集中治療室で行われた。2件の研究では、10%PIと70%イソプロピルアルコール中の2%クロルヘキシジンが比較された。3件目の研究では、2種類のクロルヘキシジン製剤(アルコールベースと水ベース)を比較した。すべての研究は、妊娠26週から35週の間に生まれた出生体重1,000gから2,000gの未熟児を対象としていた。いずれの研究も、製薬会社からの資金提供を受けていなかった。

主な結果

70%アルコール中の2%クロルヘキシジン(CHG-IPA)とPIを比較した研究では:
・ PIと比較して、CHG-IPAの使用はCRBSI(2研究、乳児352人)および死亡(1研究、乳児304人)にほとんど差がない可能性がある。CHG-IPAが皮膚熱傷およびCLABSIを減少させるかどうかは不明である(2研究、乳児352人)。
・ 10%PIの使用は甲状腺ホルモンの産生を阻害する可能性がある(1研究、乳児304人)。

水溶性クロルヘキシジンと比較して、アルコール性クロルヘキシジンはCRBSIおよびCLABSIの発生率にほとんど差がなく、おそらく皮膚刺激性にもほとんど差がないであろう(1研究、乳児114人)。

エビデンスの限界

PIと比較して、クロルヘキシジンがCRBSI、CLABSI、または死亡の予防に優れているという確信には乏しく、他の転帰についてはクロルヘキシジンがPIより優れているというエビデンスには確信がない。対象となった研究は小規模であり、研究に関与した人々は乳児に使われた消毒薬の種類を知っていたため、結果に影響を与えた可能性がある。

本レビューの更新状況

本エビデンスは2022年4月22日までのアップデートされたものである。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2023.08.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013841.pub2》

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