システマティックレビューの妥当性は、レビューの実施方法に依存する。統計的に有意な所見や肯定的な所見を有する研究の方が、有意でない所見を有する試験よりもシステマティックレビューに掲載されやすく、またシステマティックレビューに含まれる可能性が高いといった系統的なバイアスがある場合、レビューの結論の妥当性が脅かされる可能性がある。
この方法論レビューでは、臨床試験(倫理審査委員会で承認されたものなど)の公表が、試験結果の統計的有意性や方向性にどの程度影響を受けるかを調査した5つの研究を同定した。これらの研究では、肯定的な所見(統計的に有意(P < 0.05)な所見、または重要或は印象的と認識される所見、または治療効果の肯定的な方向性を示す所見のいずれかと定義)を有する試験は、統計的に有意ではない所見(P ≥ 0.05)、または重要ではないと認識される所見、または治療効果の否定的或は無効な方向性を示す研究と比較して、公表される確率が約4倍であることが示された。これは、治療効果の否定的な方向性を示す試験の41%が公表されると仮定した場合のリスク比1.78(95%CI 1.58~1.95)に相当する。2つの研究では、肯定的な所見が得られた試験は、否定的な所見が得られた試験に比べて、より早く発表される傾向があることがわかった。試験の規模(3件の研究で評価)、資金源、学歴、研究責任者の性別(1件の研究で評価)は、試験が公表されるかどうかに影響を与えないようであった。
これらの結果は、臨床試験の参加者を募集する前に臨床試験の登録を義務付けることを支持するものであり、レビューの著者は、彼らの結果にかかわらず、研究に含まれる可能性のあるすべての研究について知ることができる。システマティックレビューを実施する人々は、レビューにおける出版バイアスの潜在的な問題を評価し、出版された試験と未出版の試験の両方を包括的に検索することで、この問題に対処する方法を検討すべきである。
《実施組織》 阪野正大、季律 翻訳[2020.08.05]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《MR000006.pub3》