本レビューでのエビデンスは、早産児でのPVHを予防し、もしくは小児期の神経学的障害から児を保護するためのフェノバルビタール母体予防投与を支持しない。フェノバルビタール投与により母体鎮静を招く可能性がある。今後試験が実施される場合、追跡時に神経発達状態を測定すべきである。
早産児には脳室周囲出血(PVH)のリスクがある。フェノバルビタールは、虚血性傷害を予防する、あるいは脳での血圧および血流の変動を減少する可能性がある。
児でのPVH予防を主要目的として、超早期産のリスクが切迫している女性へのフェノバルビタール投与の利益および有害性を評価すること。
Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register(2010年12月20日)を検索した。
フェノバルビタール出生前曝露後の新生児および母体のアウトカムを、プラセボの有無を問わず対照と比較した報告データのあるランダム化試験。
レビューアらが別々に試験の適格性と質を評価しデータを抽出した。試験の質の効果を評価するため、最初の解析およびあらかじめ規定した感度分析に適格な試験を組み入れた。
9件の試験(女性1,752例)が選択基準に合致した。すべての対象試験の解析により、母親が出産前にフェノバルビタール投与を受けた児において、すべてのグレードのPVH率[リスク比(RR)0.65、95%信頼区間(CI)0.50~0.83;9件;女性1,591例]、および重度(グレード3および4)のPVH率(RR 0.41、95% CI 0.20~0.85;8件;女性1,527例)の有意な減少が示された。重度のPVHがより高率であったために解析中で過剰な重みの一因となった質の低い試験によって、これらの結果は影響を受けていた。質の高い2件の試験のみを対象とした場合、これらの有益な効果はすべてのグレードのPVH(RR 0.90、95%CI 0.75~1.08;2件;女性945例)および重度のPVH(RR 1.05、95%CI 0.60~1.83;2件;女性945例)について消失した。母親に出産前フェノバルビタール投与が実施された児とそうでなかった児との間で、生後18カ月~24カ月時、7歳時で小児を追跡調査した神経発達異常の発症率に差は認めなかった。母体の鎮静はフェノバルビタール投与を受けた女性で多かった(RR2.06、95%CI 1.79~2.37;1件;女性576例)。