チエノピリジン誘導体は、高リスク患者において重篤な血管イベントを予防する上でアスピリンと少なくとも同程度、おそらくより有効であるかもしれない。しかし、追加利益の大きさは不確かであり、極わずかである可能性もある。クロピドグレルの有害作用プロファイルはチクロピジンよりも望ましいことから、選択すべきチエノピリジン系はクロピドグレルである。純粋にアスピリンに忍容性のない患者またはアスピリンにアレルギーのある患者にはアスピリンの代替として使用すべきである。
アスピリンは最も広く検討されている、重篤な血管イベントの予防に処方される抗血小板薬であり、血管系の高リスク患者で生じる血管イベントのオッズを約4分の1に低下させる。チエノピリジン誘導体は異なる機序で血小板の活性化を阻害することから、その有効性はより高いと思われる。
高リスク患者、特にTIAまたは虚血性脳卒中の既往歴のある患者における、重篤な血管イベント(脳卒中、心筋梗塞(MI)または血管死)を予防するためのチエノピリジン誘導体(チクロピジンンおよびクロピドグレル)の有効性および安全性をアスピリンと比較し、明らかにする。
Stroke, Heart and Peripheral Vascular Diseases Cochrane Review Groups(最終検索2008年7月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2008年第3号)、MEDLINE(1966年~2008年8月)およびEMBASE(1980年~2008年8月)の試験登録を検索した。関連性のある論文の参考文献リストも検索し、その他の研究者および製薬企業Sanofi-BMSに問い合わせた(2008年12月)。
血管系の高リスク患者を対象にチエノピリジン誘導体をアスピリンと直接比較した交絡のないすべての二重盲検ランダム化試験。
2名のレビューアが独立にデータを抽出し、試験の質を評価した。最も大規模な試験の第1著者から追加データを求めた。
26,865例の血管系の高リスク患者を対象とした10件の試験を含めた。試験は全般的に質が高かった。9件の試験(患者7,633例)ではアスピリンがチクロピジンと比較されており、1件の試験(患者19,185例)ではアスピリンとクロピドグレルを比較していた。アスピリンと比較して、チエノピリジン系への割付けは重篤な血管イベントのオッズに統計学的に有意な中等度の低下がみられ(11.6%対12.5%、オッズ比(OR)0.92、95%信頼区間(CI)0.85~0.99)、これは約2年間治療した患者1,000例あたり10件(95%CI 0~20)で重篤な血管イベントが回避されることに相当した。しかし、このような広い信頼区間は、極わずかな追加利益の可能性を含んでいるにすぎない。アスピリンと比較し、チエノピリジン系は胃腸の有害作用を有意に減少させた。しかし、チエノピリジン系は皮疹および下痢のオッズを上昇させ、チクロピジンはクロピドグレルを上回った。チクロピジンへの割付けは好中球減少のオッズを有意に上昇させたが、クロピドグレルではみられなかった。TIA/虚血性脳卒中の患者の結果は、すべての患者を統合した結果と同様であった。