時差ぼけは、複数のタイムゾーンを移動する航空旅行者によくみられる。時差ぼけは、体内リズムが目的地の昼夜サイクルのリズムから外れることから生じる。メラトニンは、体内リズムの調節に中心的な役割を果たす松果体ホルモンであるが、体内リズムと外界のリズムを再び合わせるための薬物として用いられている。メラトニンは時差ぼけの防止または軽減にきわめて有効であり、不定期に短期使用することは安全であると考えられる。5つ以上のタイムゾーンを横断し移動する成人旅行者に、特に東へ移動する場合やこれまでに時差ぼけを経験したことがある場合には、メラトニン投与は推奨される。2~4のタイムゾーンを横断する旅行者にも、必要に応じてメラトニン使用が可能である。
メラトニンは時差ぼけの防止または軽減にきわめて有効であり、不定期に短期使用することは安全であると考えられる。5つ以上のタイムゾーンを横断し移動する成人旅行者に、特に東へ移動する場合やこれまでに時差ぼけを経験したことがある場合には、メラトニン投与は推奨される。2~4のタイムゾーンを横断する旅行者にも、必要に応じてメラトニン使用が可能である。
メラトニンの薬理学および毒性学について、系統的な研究が求められる。また、メラトニン製品の定期的な製剤品質管理を確立する必要がある。
てんかん患者へのメラトニン投与の効果およびワルファリンとの薬物相互作用の可能性について、検討が必要である。
時差ぼけは、複数のタイムゾーンを移動する航空旅行者によくみられる。時差ぼけは、体内リズムが目的地の昼夜サイクルのリズムから外れることから生じる。メラトニンは、体内リズムの調節に中心的な役割を果たす松果体ホルモンであるが、体内リズムと外界のリズムを再び合わせるための薬物として用いられている。
複数のタイムゾーンを横断する航空旅行後に生じる時差ぼけを軽減するために、さまざまな投与レジメンにより投与した経口メラトニンの有効性を評価する。
Cochrane Controlled Trials Register、MEDLINE、EMBASE、PsychLitおよびScience Citation Indexを電子的に検索し、さらに「Aviation, Space and Environmental Medicine」誌および「Sleep」誌をハンドサーチした。また、関連のある他の試験を求めて、関連研究の引用文献リストを検索した。関連研究の筆頭著者に、未発表の試験に関する説明を依頼した。ランダム化試験以外で用いられたメラトニンに関係する有害事象報告を、「Side Effects of Drugs(SED)」誌およびSED年報、「Reactions Weekly」誌、MEDLINE、ならびにWHO Uppsala Monitoring Centre (UMC)および米国食品医薬品局の副作用データベースで体系的に検索した。2008年2月12日に検索の更新を実施したが、新規に同定された研究はなかった。
航空旅行者、航空乗務員および軍人を対象として、経口メラトニンを投与し、プラセボまたは他の薬物治療と比較したランダム化試験。アウトカム指標は、時差ぼけの主観的評価または主観的健康、日中の疲労感、入眠および睡眠の質、心理学的機能、正常回復までの期間、あるいは概日リズムの指標など関連する要素で構成することとした。
10試験が選択基準に合致した。すべての10試験において、メラトニンをプラセボと比較していた。このうち1試験では、さらに睡眠薬のゾルピデムとも比較していた。9試験は適切な質を備えており評価に組み入れたが、1試験は試験デザインに欠陥が認められたため評価に用いることができなかった。MEDLINE、「Reactions Weekly」誌およびWHO UMC databaseの検索結果から、試験以外での有害事象報告の存在が明らかになった。
10試験のうち8試験から、目的地での目標就寝時間(午後10時~午前0時)近くにメラトニンを投与した場合、5つ以上のタイムゾーンを横断した際の時差ぼけが軽減されることが明らかにされた。1日用量のメラトニン0.5~5mgは、0.5mg投与よりも5mg投与で入眠が早くよく眠れることを除き、同様に有効であった。5mgを超える用量では、それ以上の効果は認められなかった。徐放性メラトニン2mg投与では相対的に有効性がみられなかったことから、短時間で最高濃度に達するメラトニンがより有効に作用することが示唆される。必要なデータが得られた2試験のみに基づくと、治療必要例数(NNT)の概算値は2例である。横断するタイムゾーン数が増えるほど、また西への移動距離が短いほど、高い効果が得られると考えられる。
メラトニン投与はタイミングが重要である。日中の早い時間に服用するなど投与時間を誤まると、眠気が生じる傾向があり、現地時間への適応にも遅延が生じるおそれがある。他の副作用の発生頻度は低い。症例報告から、てんかん患者やワルファリン服用患者ではメラトニン投与は悪影響をもたらす可能性が示唆される。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
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