本レビューにより、日帰り手術と入院手術との間で、費用節約はみられるがアウトカムおよび術後合併症のリスクに有意差はないというエビデンスが得られた。これは、先進国で実施された、詳細でかつ方法論的に妥当な1件の試験に基づいている。日帰り手術としての白内障手術の成功、安全性および費用対効果は、許容可能と考えられる。将来の研究は、高品質の臨床データベースおよび登録により提供されるエビデンスに重点を置くことが望ましく、それによって臨床医および医療政策立案者が入院手術に対する臨床的かつ社会的適応に合意することができ、これらの基準を満たさない場合は日帰り手術を選択することによって資源をより有効に利用することができると思われる。
加齢白内障の割合は世界の失明例中の40%を上回る割合を占め、白内障が原因で失明している患者の大多数は発展途上国でみられる。白内障患者数の増加に伴い、白内障手術を日帰り手術として利用可能とする喫緊の必要性がみられる。
入院手術と比較した、日帰り手術として実施された白内障摘出術の安全性、実効可能性、有効性および費用対効果について信頼性の高いエビデンスを提供すること。
CENTRAL(Cochrane Eyes and Vision Group Trials Registerを含む)(コクラン・ライブラリ2011年、Issue 5)、MEDLINE(1950年1月~2011年5月)、EMBASE(1980年1月~2011年5月)、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database (LILACS)(1982年1月~2011年5月)、metaRegister of Controlled Trials(mRCT)(http://www.controlled-trials.com/)および ClinicalTrials.gov(http://www.clinicaltrials.gov/)を検索した。試験の電子的検索について日付および言語の制約は設けなかった。電子的データベースの最新検索は2011年5月23日に実施した。
加齢白内障の日帰り手術と入院手術とを比較しているランダム化比較試験(RCT)を選択した。主要アウトカムは手術後6週目の視力満足度であった。
2名のレビューアが別々に試験の質を評価しデータを抽出した。その後追加された情報について研究著者に連絡を取った。試験から有害作用の情報を収集した。
1,284例を対象とした2件の試験(スペインと米国で実施)を選択した。1件の試験で日帰り手術群に早期術後合併症率における統計学的に有意な差が報告され、眼内圧上昇のリスクが増加していたが術後4カ月目の視力アウトカムに対する臨床的関連性はみられなかった。術後4カ月目の術眼の視力(Snellenライン)の平均変化は、日帰り手術群で4.1[標準偏差(SD)2.3]、入院群で4.1(SD 2.2)で統計学的に有意ではなかった。VF14を用いて測定した生活の質スコアの術後4カ月目の平均変化の差は2群間で最小であった。費用は入院群の方が20%高く、これは一泊入院費が原因であった。1件の研究だけが非入院参加者の宿泊費用を報告しており、費用に関するデータの収集は不可能であった。