てんかんがある人において、葉酸、チアミン、ビタミンD、およびビタミンEが発作コントロールを改善したり、副作用を予防したりすることを示すエビデンスはない。
抗てんかん薬はてんかんがある人の70%で発作を止めるが、多くの副作用を引き起こす。本レビューでは、ビタミンが発作コントロールを改善したり、歯肉の腫れ、記憶障害、骨粗鬆症、血液細胞形成の疾患、末梢神経に対する影響などの副作用を予防したりするのかについて調べた。レビューした研究では、葉酸、チアミン、ビタミンD、およびビタミンEの使用について調べていたが、方法論的な質は低かった。てんかんがある人において、ビタミンが発作コントロールを改善したり、副作用を予防したりすることを示す決定的なエビデンスはない。さらなる研究が必要である。
方法論的な不備や研究数が限定的であるとことをふまえると、てんかん患者におけるビタミンのルーチン使用を支持する信頼できるエビデンスはない。さらなる試験が必要であるが、特に、骨軟化症の予防におけるビタミンD補充の有用性や、発作に対するビタミンEの役割、認知機能の改善におけるチアミンの役割について評価する必要がある。
ビタミンはある種の発作を抑え、抗てんかん薬(AED)の有害作用を予防するのに有効であることが報告されている。本レビューではランダム化比較試験のエビデンスを要約する。
ビタミンが発作のコントロールを改善し、AEDの有害作用を減らしたり、てんかんがある人の生活の質を改善したりするのかについて評価すること。
1966年~2006年10月のMEDLINE、Cochrane Epilepsy Group Specialized Register(2006年12月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、<4>The Cochrane Library</4>4号、2006年)を検索し、同定した研究を相互参照した。
あらゆる年齢・種類のてんかんがある人を対象に、単独またはAEDに上乗せした1つ以上のビタミンの効果を調べたランダム化または準ランダム化研究。
2名のレビュー著者が選択する試験を評価し、データを抽出した。評価したアウトカムは発作頻度、歯肉増殖症、神経障害、骨塩量の変化、血清カルシウム、アルカリホスファターゼ、血液像、AEDの血清濃度、神経心理学や生活の質のアウトカムであった。主要な解析はITT解析であった。
15件の研究が選択基準を満たしたが、方法論的な質が低かった。ランダム化の方法が記載されておらず、ほとんどの研究で登録した参加者が少なかった。9件の研究(331例)では葉酸について調べた。2件の研究(75例)では発作頻度が50%以上減少する効果はみられなかった(OR 0.96、95% CI 0.32 ~ 2.29)。また、歯肉の健康、理解力、行動、メンタルヘルスや性格、赤血球容積や血色素量の測定値に対する効果についてのエビデンスはなかった。葉酸は、血清フェニトインや血清フェノバルビタールの一貫した変化や、末梢神経の平均運動伝導速度の改善には関連しなかった。1件の小規模研究(72例)では、チアミンが精神運動速度、視空間能力、選択的注意、言語抽象能力に関連する神経心理学的機能を改善することがわかった。1件の研究(226例)により、AEDとビタミンDを併用するてんかん患者では、ビタミンD非補充の患者と比較して、骨塩量(BMC)が有意に高いことがことがわかった(OR 3.6、95% CI 2.48 ~ 4.72、p < 0.00001)。これらの研究では血清カルシウム、アルカリホスファターゼ、全般的な健康に対する有意な効果はみられなかった。1件の小規模研究(24例)では、プラセボと比較してビタミンE投与群で発作頻度が有意に減少した(p = 0.00005、Peto法のOR 26.73、95% CI 5.46 ~ 130.92)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.6]
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