背景
禁煙補助薬や行動支援にかかる費用を減額する、または費用を補助する介入を行うことで、喫煙者の禁煙を支援することができる。喫煙者と医療従事者を直接の対象者とする経済的介入が、薬の使用、禁煙の試み、禁煙の成功に及ぼす影響についてのエビデンスをレビューした。
研究の特徴
喫煙者と医療従事者を対象とした経済的介入を含む全ての関連研究を検索した。喫煙者を対象とした研究は、医療費助成の介入が、禁煙治療の利用を促したり、禁煙を成功に導くことを目的としているものとした。医療従事者を対象とした介入に関する研究は、禁煙治療薬を処方するなど、禁煙支援を促進することを目的としているものとした。
主な結果
本レビューの更新のために、2016年9月に禁煙の治療と成功に対する経済的介入の効果に関する研究を検索した。新たに6件の関連研究が見つかり、合計17件の研究をレビューした。
喫煙者を対象とした研究は15件であった。喫煙者に対して禁煙治療の費用を全て補助すると、補助しない場合と比較して、禁煙を試みた喫煙者(4件の研究:合計9065人の対象者)、禁煙治療を利用した喫煙者(7件の研究:合計9455人の対象者)、禁煙に成功した喫煙者(6件の研究、合計9333人の研究参加者)の数が増加した。
医療従事者を対象とした研究は3件であった。経済的介入が禁煙成功に及ぼす影響を調査した2つの研究(合計2311人の対象者)において、禁煙率の向上はは明確には示されなかった。また、医療従事者を対象とした経済的介入も、禁煙補助薬の使用に影響を与えなかった(2件の研究:合計2311人の対象者)。しかし、経済的介入によって、禁煙カウンセリングを受けた喫煙者の数は増加した(3件の研究:合計25,820人の対象者)。
介入のコストに関する情報は、8つの研究(合計33,488人の対象者)で得られた。個々の研究の経済評価では、禁煙の絶対的な差は小さいものの、禁煙に成功した一人当たりのコストは低いか中程度であることが示された。
エビデンスの質
結論として、喫煙者を対象とした経済的介入は、禁煙を試みる人の割合、禁煙治療を利用する割合、禁煙に成功する喫煙者の割合を増加させた。医療従事者に対する経済的インセンティブによる明確な禁煙の効果は認められなかった。このレビューには、結論に確信を持てるかどうかに影響するいくつかの限界がある。このレビューに採用された研究は、研究の質、研究手法、研究デザインに大きなばらつきがあり、それぞれの研究の結果を比較することは困難である。
《実施組織》星佳芳 翻訳、清原康介 監訳[2021.06.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004305.pub5》