インフルエンザに感染すると、心血管疾患(心臓発作、脳卒中など)やそれに伴う死亡が起こりやすくなる可能性がある。しかし、インフルエンザワクチンの接種により、このリスクを減らすことができる可能性がある。このレビューでは、インフルエンザワクチンを受ける人と、ワクチンを受けない人(プラセボまたは無治療)を比較したランダム化研究を対象とした。今回のレビューのアップデートでは、12,029人を対象とした8件の試験が見つかった。そのうち4件は、心臓病と診断された人(1,682人)を対象とした研究だった。残りの4件は、一般の人々や高齢者(10,347人)を対象とした研究であった。一般の人を対象とした研究では、安全性の解析の一環として心血管疾患の発症が報告されているが、インフルエンザワクチンの接種により心血管疾患を予防できるかどうかを判断するには症例数が少なすぎた。また、群間での差は認められなかった。心臓病と診断された人を対象とした研究では、インフルエンザワクチンの接種により、心血管疾患による死亡が減少し、心血管疾患の複合イベント(心臓発作、脳卒中、バイパス手術の必要性など)が減少することが示唆されている。しかし、これらの研究は小規模で、バイアスのリスクもあったため、結果を確信するには、より質の高い大規模な研究が必要である。
《実施組織》堺琴美、小林絵里子 翻訳[2021.10.11]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD005050.pub3》