双極性障害に対するオメガ3脂肪酸

本システマティックレビューでは、双極性障害に対するオメガ3脂肪酸の有効性について調べた。5件のランダム化比較試験が本レビューの選択基準を満たした。解析可能なデータを提示していたのは1件の試験のみで、外来患者の混合集団に対する補助療法としてエイコサペンタエン酸エチル(EPA-E)について調べた。抑うつ症状については複数の有益な利益がみられたが、躁症状にはみられなかった。有害事象は報告されなかった。双極性障害に対してオメガ3脂肪酸を明確に推奨するには、根拠となるエビデンスが今のところ不十分である。しかし、全般的な健康上の利益やオメガ3の安全性をふまえると、本レビューの予備的なエビデンスは、特定の指標となる母集団において検出力と試験の質が高く、強固な論拠を提示している。

著者の結論: 

1件の研究結果では、双極性障害の抑うつ症状に対する補助療法としてオメガ3の効果が示されたが、躁症状では示されなかった。データが限定的であるため、これらの知見の判断には注意を要する。適切にデザインされたランダム化比較試験の実施が、この分野では早急に求められる。

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背景: 

双極性障害は複雑な精神疾患で、全世界で上位30位に入る障害の原因である。気分安定薬が薬理学的な一次介入となり、急性エピソードの治療と予防投与の両方がある。一方、オメガ3脂肪酸の栄養補助食品が精神状態や、特に気分障害の人に有益である可能性を示すエビデンスが増えている。

目的: 

双極性障害に対するオメガ3脂肪酸の有効性について、単独療法または補助療法として評価すること。

検索戦略: 

以下のデータベースについて電子検索を行った。CCDANCTR-StudiesとCCDANCTR-Referencesを2008年2月12日に検索し、さらにBiological Abstracts、CINAHL、コクラン・ライブラリ、CCDAN Register、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOについても検索を実施した。また、選択した引用文献リストを検索し、最初に選択した研究のすべての著者や、オメガ3を製造する製薬会社に連絡を取った。

選択基準: 

本レビューでは、関連性のあるあらゆるランダム化比較試験を選択した。双極性障害と診断されたあらゆる年齢層の男女を対象とした研究を適格とした。あらゆる種類や用量のオメガ3脂肪酸を、単独療法または標準的な薬物療法への上乗せとして用いた研究を適格とした。主要アウトカムは症状の重症度とし、副次的評価項目は有害作用、脱落、治療の満足度とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が検索で同定した引用をそれぞれ調査した。関連性がありそうな抄録を同定し、論文の全文を取り寄せ、選択の可否や方法論的な質を再評価した。関連性のあるあらゆるデータを抽出した。連続的なアウトカムデータには重み付け平均差(WMD)と95% 信頼区間(CI)を用いた。

主な結果: 

本レビューでは5件の研究が選択基準を満たしたが、方法論的な質のばらつきが大きかった。解析データを提示したのは75例を対象とした1件の研究のみで、治療群の利益がコントロール群を上回ることが、抑うつ症状のレベル(WMD -3.93、95% CI -7.00 ~-0.86)と臨床全般印象尺度(WMD -0.75、95% CI -1.33 ~ -0.17)において示されたが、躁症状(WMD -2.81、95% CI -7.68 ~1.90)については示されなかった。5件の研究では重篤な有害作用の報告はなかった。脱落パターンについては研究間のばらつきが大きかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.26]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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