本レビューは、注意欠陥・多動性障害を対象とした介入としてのホメオパシーのエビデンスを評価することを目的としている。4件の試験を検索し評価を行ったところ、複数の所見の混在が認められた。全体的に、このレビューの結果は、全体的な症状、注意欠陥・多動性障害の中核症状または関連した転帰に対するホメオパシーの有効性について、エビデンスは認められていない。
現在、ADHDの治療に対するホメオパシーの有効性については、エビデンスがほとんど得られていない。さらにランダム化比較試験を実施する前に、最適な治療プロトコールの作成を推奨する。
ホメオパシーは、小児や成人で安全かつ効果的な治療法として促進されている補完代替医療の一つである。英国内でのホメオパシーの使用は、成人人口の1.9%(Thomas 2004)、16歳未満の小児の約11%(Simpson 2001)と推定されている。Ritalin(リタリン)のような刺激剤の代替品として、注意欠陥・多動性障害を対象とした投薬以外の介入としてホメオパシーの可能性への関心が高まっている。ホメオパシーは、天然または人工物質の様々な希釈液を使用して「類は類を治す(like with like)」という治療原理に基づく医療系統である。ホメオパシーは、各患者の症状と兆候の独自の特性に焦点を当て、この情報を使用して各患者の適切な処方を決定する。
注意欠陥・多動性障害の治療としてのホメオパシーの安全性と有効性を評価すること。
次のように広範囲にわたるデータベースについて、その初版から2006年3月までを検索した。CENTRAL、MEDLINE、AMED、BIOSIS、CISCOM、CINAHL、学位論文の抄録(Dissertation Abstracts)、ECH(ホメオパシーに関する欧州委員会の論文データベース:European Committee for Homeopathy thesis database)、EMBASE、ERIC、HomInform(グラズゴーホメオパシー病院図書館:Glasgow Homeopathic Hospital Library)、LILACS、PsycINFO、科学文献引用索引(Science Citation Index)、SIGLE、GIRI – 超低用量国際会議(International congress on ultra-low doses)、Liga Medicorum Homeopathica Internationalis現在実施中または現在の研究について、ホメオパシー専門家に問い合わせを行った。
実治療または対照群のいずれかにランダムにまたは準ランダムに割り当てられたADHD被験者またはHKD被験者の治療に、個別化、臨床または調合されたホメオパシーが使用されたすべての研究を対象とした。対照群は、待機リスト、無治療、投薬、プラセボホメオパシー、教育的または行動的介入などであった。
対象となった4件の試験(合計n=168)のデータを抽出し、RevManに入力した。結果を統合し、効果サイズの推定値を計算の上、(標準化された平均差を用いて)図形および叙述形態(効果サイズが算出可能な場合にのみ使用)で示した。
現時点までに評価されたホメオパシーは、注意欠陥・多動性障害における全般的な症状、不注意、過活動、衝動、不安などの関連した転帰などの中核症状に対して、有意な治療効果は示されていない。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
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