喘息発現リスクの高い小児の喘息予防を目的とした、吸入アレルゲンまたは食物アレルゲン、あるいはその両方を軽減させる一面的および多面的な介入

著者の結論: 

入手できたエビデンスにより,複数のアレルゲンへの曝露を低減することにより、小児(年齢5歳未満および5歳以上の時点)の現在の喘息診断の可能性が通常ケアと比較して低下することが示されている。一面的介入の研究では、コントロールと比較して統計学的に有意な効果はみられなかった。小児喘息の発現リスクのある小児に対して、食物アレルゲンの低減および環境改善を特徴とした多面的介入は、小児期におけるその後の医師による喘息診断のオッズを半減させる。すなわち、治療必要数(NNT)は17となる。親の報告による多面的介入の効果は、喘鳴については一貫性がなく、夜間咳嗽や呼吸困難への有意な影響は認められなかった。一面的介入を実施した小児のデータは、すべてのアウトカムについて、コントロール群のデータとの有意差が認められなかった。多面的介入が一面的介入よりも有効であるか否かについては依然、定かではない。実施した比較は間接的であり、引き出された結論は不確かである。知り得る限り、両介入方法をランダムに比較している進行中の研究はない。しかしながら、これらの結果により、小児喘息の有病割合の低減を目的とした多面的介入と一面的介入の直接的な比較を今後実施する必要性が示されている。

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背景: 

アレルゲン曝露は、喘息発現との関連が考えられる環境因子のひとつである。喘息が多因子疾患であるとすれば、関連性のある環境因子の大部分またはすべてを同時に避けた場合に限り、その予防の有効性が実証されるという仮説が成り立つ。

目的: 

リスクの高い小児を対象に、喘息および喘息症状の予防における一面的および多面的な介入の効果をコントロール介入との比較で評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Airways Trials Register(2011年1月)を検索した。

選択基準: 

小児喘息の一次予防を目的としたアレルゲン曝露の低減に関するランダム化比較試験。多面的(吸入および食物アレルゲンの両方に対する曝露低減)または一面的(吸入または食物アレルゲンのいずれかに対する曝露低減)な介入を対象とした。出生時(または妊娠中)より少なくとも2歳まで追跡調査が行われていることを要件とした。

データ収集と分析: 

主要アウトカム(現在の診断:喘息)または副次的アウトカムのひとつ(現在の呼吸器症状:喘鳴、夜間咳嗽、および呼吸困難)、もしくはその両方のアウトカムを評価している研究を解析の対象とした。多面的および一面的な介入試験を分けて統合した。相互作用に対する検査を用いて、それらの効果の間接的な比較を行い、相対オッズ比を算出した。

主な結果: 

3件の多面的介入研究および6件の一面的介入研究を選択した(小児3,271例)。医師が5歳未満の小児の喘息を診断し、5歳以上の小児については呼吸器症状および肺機能基準の定義に従い、喘息を診断した。両群で通常ケアと比較して、多面的介入による治療が優れていた[5歳未満:オッズ比(OR)0.72、95%信頼区間(CI)0.54~0.96および5歳以上:OR 0.52、95%CI 0.32~0.85]。しかしながら、一面的介入とコントロール介入間でアウトカムに関する有意差は認められなかった[5歳未満:OR 1.12、95%CI 0.76~1.64および5歳以上:OR 0.83、95%CI 0.59~1.16]。これらの治療法を間接的に比較した結果、5歳未満(相対OR 0.64、95%CI 0.40~1.04、P = 0.07)または5歳以上(相対OR 0.63、95%CI 0.35~1.13、P = 0.12)の小児が喘息と診断される頻度の減少について、多面的介入と一面的介入に有意差は認められなかった。追跡調査時の夜間咳嗽症状の発生率の減少についても、一面的または多面的な介入とコントロールに有意差は認められなかった。しかしながら、喘鳴については多面的介入と一面的介入で有意差が認められたが(相対OR 0.59、95%CI 0.35~0.99、P = 0.04)、治療中のデータのみを解析したところ、有意性が消失した。

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