根治的前立腺摘除術後のアジュバント放射線治療は全生存率を改善し、遠隔転移率を低減させるが、これらの効果は長期追跡を実施した場合にのみ認められる。5年および10年時点で局所制御率が改善し、生化学的再発リスクが低下するが、後者は臨床的エンドポイントに至っていない。中等度または重度の急性および遅発性毒性はきわめて少ない。尿道狭窄と尿失禁のリスクは高いが、限られたデータに基づけば、生活の質が損なわれることはない。根治的前立腺摘除術を受けた男性の大半は平均余命が延長することを考慮すれば、ハイリスク因子をもつ男性に対して根治的前立腺摘除術後の放射線治療を検討すべきである。ただし、最適な実施時期については不明である。
リンパ節は関与していないが、前立腺被膜を越えて精嚢または切除断端まで波及している前立腺癌の根治的前立腺摘除術(RP)を受けた男性は、再発のリスクが高い。これらのハイリスク因子をもつ男性を対象に前立腺床への術後放射線治療(RT)を行えば、このリスクを軽減し、治癒させることができると考えられる。
ハイリスク因子をもつ男性を対象に、前立腺癌の根治的前立腺摘除術後に実施したアジュバント放射線治療の効果を根治的前立腺摘除術の単独治療と比較評価する。
Cochrane Prostatic Diseases and Urological Cancers Specialised Register(2011年2月23日)、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、EMBASE(1966年1月~2011年2月)、PDQR(Physician Data Query)現在進行中の研究を対象とする治験レジストリデータベース(2010年11月2日)および選択した研究とレビューの参考文献リストを検索したほか、当該議事録をハンドサーチした。
ランダム化比較試験(RCT)により、根治的前立腺摘除術後の放射線治療と根治的前立腺摘除術の単独治療とを比較する。
2名のレビューアが組入れとバイアスについて研究を別々に評価し、解析用データを抽出した。著者に連絡をとり、不明なデータを明らかにするとともに、欠落している情報を入手した。
1,815例の男性患者が組み入れられている3件のランダム化比較試験を検索により特定した。前立腺摘除術後のアジュバント放射線治療は、5年時点の全生存率に影響を与えなかったが[RD(リスク差)0.00、95%CI -0.03~0.03]、10年時点で生存率に改善が認められた(RD -0.11、95%CI -0.20~-0.02)。アジュバント放射線治療を実施しても、5年時点での前立腺癌特異的死亡率に改善は得られなかった(RD -0.01、95%CI -0.03~0.00)。アジュバント放射線治療を実施したところ、5年時点では転移性癌は減少しなかったが(RD -0.00、95%CI -0.04~0.03)、10年時点では減少が認められた(RD -0.11、95%CI -0.20~-0.01)。また、5年および10年時点における局所制御率が改善したほか(それぞれRD -0.10、95%CI -0.13~-0.06およびRD -0.14、95%CI -0.21~-0.07)、5年および10年時点の生化学的無再発生存率にも改善が認められた(それぞれRD -0.16、95%CI -0.21~-0.11およびRD -0.29、95%CI -0.39~-0.19)。臨床的無再発生存期間のデータは記録されていない。アジュバント放射線治療によって、急性および遅発性の消化器毒性[このRDデータは入手可能か?]、尿道狭窄(RD 0.05、95%CI 0.01~0.09)および尿失禁(RD 0.04、95%CI 0.01~0.08)が増加した。勃起障害は増加せず、生活の質(quality of life)の低下も認められなかったが(RD 0.01、95%CI -0.06~-0.26)、十分なデータは揃っていない。