低所得国では、胃腸炎と呼吸器感染症(とくに肺炎)の2つが死因の上位を占める。亜鉛を予防的に補充すれば、免疫不全につながる欠乏症が改善する可能性があり、また、亜鉛の予防的補充によって、感染症、特に肺炎による小児の死亡率および罹病率が低下する可能性を示唆するエビデンスもある。肺炎は肺の炎症で、ウイルス、細菌、その他の微生物によって引き起こされる。肺炎管理の補助療法としての亜鉛補充の効果を評価した研究は限定的で、その結果も一定でない。このレビューの目的は、抗菌薬の補助療法として、亜鉛補充が月齢2~59カ月の小児の肺炎治療に果たす役割を評価することである。
レビューには、小児の肺炎に抗菌薬の補助療法として亜鉛を補充してその効果を評価したランダム化比較試験(RCT)のうち、十分な質であった4件を採用した。研究はバングラデシュ、ネパールおよびインドで実施され、月齢2~35カ月の小児3267例がランダム化により亜鉛またはプラセボを投与された。重篤な有害事象は観察されなかった。解析からは、頻呼吸(呼吸数が50回/分超)からの回復時間および胸部陥凹からの回復時間の点で、患者の臨床的回復に及ぼす有意な効果が示されなかった。このほか、この介入が退院までの時間に及ぼす効果も有意なものではなかった。月齢2~35カ月の小児の肺炎に対して、標準的な抗菌薬療法の補助療法として亜鉛の使用を推奨するには、このレビューで示されたエビデンスでは不十分である。
月齢2~35カ月の小児の肺炎に対する標準的な抗菌薬療法の補助療法として、亜鉛の使用を推奨するには、このレビューで示されたエビデンスでは不十分である。
低所得国では、下痢性疾患と急性呼吸器感染症(ARI)、特に肺炎が死因の上位を占める。肺炎管理の補助療法としての亜鉛補充の効果を評価した研究は限定的で、その結果も一定でない。
月齢2~59カ月の小児の肺炎治療(臨床的回復)の抗菌薬に対して、補助療法として実施する亜鉛補充を評価すること。
Cochrane Acute Respiratory Infections(ARI)Group およびCochrane Infectious Diseases GroupのSpecialised Registersを含むCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2011年第1号)、MEDLINE (1950年~2011年3月第2週)、EMBASE(1974年~2011年3月)、CINAHL(1981年2011年3月)、LILACS(1985年~2011年3月)、AMED(1985年~2011年3月)、CAB Abstracts(1910年~2011年3月)およびWeb of Science(2000年~2011年3月)を検索した。
月齢2~59カ月の小児の肺炎に対する抗菌薬の補助療法としての亜鉛補充を評価したランダム化比較試験(RCT)。
2名のレビュー著者が独立して、試験の適格性を評価し、採用のために入手した論文タイトルおよび抄録をすべてスクリーニングした。論文タイトルおよび抄録によるスクリーニングで関連性が確認できない場合は、論文全文を検索し、再検討した。
月齢2~35カ月の小児3267例が参加した4件の試験を採用した。解析からは、肺炎児(重症、非重症)に対して、標準的な抗菌薬療法に亜鉛補充を追加しても、臨床的回復時間に統計学的に有意な効果が認められないことが明らかになった(ハザード比1.02;95%信頼区間(CI)0.93~1.11)。また、頻呼吸(呼吸数が50回/分超)からの回復時間(ハザード比1.13;95%CI 0.82~1.57)および胸部陥凹からの回復時間(ハザード比1.08;95%CI 0.88~1.31)に関しても、重症の肺炎児に対して標準的な抗菌薬療法の補助療法として実施した亜鉛補充は、コントロール群に比べて統計学的に有意な効果が認められなかった。さらに、重症の肺炎児に対する亜鉛補充は、退院までの時間にもコントロール群と比較して有意な効果はみられなかった(ハザード比1.04;95%CI 0.89~1.22)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.2]
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