性機能障害は、慢性腎臓病患者(chronic kidney disease:CKD)に非常に多く認められる。慢性腎臓病の男性患者は、性欲減退、勃起不全およびオーガズムへの到達困難が生じることが多い。慢性腎臓病の男性患者の約50~80%は勃起不全となり、その有病率は年齢とともに上昇する。慢性腎臓病の女性患者では、55%が性的興奮困難を報告している。月経困難、性発達の遅延、膣液の分泌障害、性交困難、およびオーガズムへの到達困難も認められることが多い。性的機能不全の治療に用いられてきた治療法には、ホスホジエステラー-5阻害薬(phosphodiesterase-5 inhibitors :PDE5i)、陰茎海綿体内注射、尿道内坐薬、ホルモン療法、機械的装置、および心理療法などがある。多くの臨床試験およびレビューが、慢性腎臓病ではない患者の性機能障害へのこれらの介入の役割については調べてきたが、慢性腎臓病患者に対するこれらの介入の有効性および安全性は、いまだに十分には研究されていない。今回のレビューの目的は、慢性腎臓病患者を対象とした性機能障害治療への既存の介入法における有効性および有害性を評価することであった。
352例が登録された15件の試験を対象としたが、男女とも登録された試験は1件のみであった。試験では、ホスホジエステラーゼ-5阻害薬(PDE5i)、亜鉛、ビタミンE、ビタミンD、またはブロモクリプチンの効果をプラセボと比較評価した。2件の研究(患者101例)において、PDE5iによって、国際勃起機能スコア(International Index of Erectile Function-5 :IIEF-5)の個別ドメインと総合スコア、ならびに全15項目IIEF-5ツール(試験1件、患者41例)が有意に上昇した。 介入終了時のテストステロン値は、透析液に亜鉛を添加しても有意に上昇しなかったが(試験2件、患者22例)、経口亜鉛投与によって介入終了時のテストステロン値は改善した(試験1件、患者20例)。亜鉛を投与した場合の、試験期間終了時の血漿黄体ホルモン値および卵胞刺激ホルモン値には差はなかった。慢性腎臓病患者におけるビタミンE、ブロモクリプチン、およびジヒドロキシコレカルシフェロールについて得られたデータは少なく、慢性腎臓病患者における陰茎海綿体内注射、経尿道的注射、機械的装置、または行動療法については試験がなかった。
PDE5iおよび亜鉛は慢性腎臓病の男性患者における性機能障害を治療するための有望な介入であるが、慢性腎炎患者への定期的な利用を支持するエビデンスは少ない。顕著な疾患負荷を考慮すると、慢性腎臓病における男女の性機能障害に対する介入の研究は、必要性はあるが十分には行われていない。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD007747.pub2】