発展途上国の妊産婦、新生児、5歳未満児の死亡率は過去20~30年で減少しているが、新生児の死亡率はほとんど変わっていない。新生児死亡のほぼ半分は、母親への破傷風トキソイドの予防接種、清潔で熟練した出産時のケア、新生児の蘇生、清潔なへその緒のケア、母乳のみでの育児、新生児の感染症の管理によって防ぐことができると認識されている。発展途上国では、出産の約3分の2が自宅で行われ、助産師などの訓練を受けた出産介助者が付き添うのは半分に過ぎない。このような妊産婦や新生児の死亡や病気の大部分は、地域の医療システムと統合したコミュニティベースのパッケージ化された介入策を開発することで対処できる可能性がある。
レビューの著者は、妊産婦の病気や死亡の予防および新生児の健康状態の改善に対する、コミュニティベースの介入パッケージの影響を評価した26件のランダム化および準ランダム化比較研究を同定した。これらの研究は主に発展途上国(インド、バングラデシュ、パキスタン、ネパール、中国、ザンビア、マラウイ、タンザニア、南アフリカ、ガーナ)で行われ、ギリシャでも1件の研究が行われた。コミュニティベースの介入パッケージを受け、医療従事者が追加でトレーニングを受けた地域では、病気や妊娠・出産時の合併症を発症した女性が少なく、死産、出産前後の乳児死亡、母親の不健康状態も少なかった。コミュニティベースの介入パッケージは、破傷風の予防接種の接種率、自宅出産および施設出産における清潔な分娩器具の使用率の向上と関連していた。また、母乳育児を早期に開始したり、母親が赤ちゃんの病気のために医療機関を受診することも改善された。これらが新生児の予後の改善につながるかどうかは不明である。今回のレビューでは、コミュニティでの妊産婦・新生児のケアを統合するために、さまざまな介入策をパッケージ化し、コミュニティ・ヘルス・ワーカーや健康増進グループを通じて効果的に提供することの重要性が強調されている。多様なコミュニティ・ヘルス・ワーカーが提供できるパッケージを通じて、地域密着型のケアを拡大するための十分なエビデンスがある。レビューされた研究のほとんどは、コミュニティ・ヘルス・ワーカーの完全な説明と特徴、特に初期の教育とトレーニングのレベル、提供された監督のレベルと程度、そしてこれらのワーカーのコミュニティでの雇用状態については記録されていなかった。このような情報は、政策や実践に大いに役立つだろう。
《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.10.08]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007754.pub3》