胎動減少は、例えば慢性胎盤機能不全によるものなど、児の状態の悪化を示す。臨床的見地から、児の死亡前数日間に母親は胎動の減少または胎動の停止を通常感じる。この理由から、児の健康状態を評価するため、医療従事者は胎動モニタリングを推奨しており、母親は自発的に胎動モニタリングを行っている。女性の胎動減少の自覚は、喫煙、母体の肥満、子宮の前壁に胎盤がある場合に低下する。胎動減少の自覚に応じた管理戦略として、早期分娩、児の精密検査を伴った待機的管理、胎児心拍陣痛図(目視またはコンピューターによる子宮収縮に伴う胎児心拍数のモニタリング)、ドップラーなどの超音波検査や胎児覚醒検査(胎児心拍陣痛図による、あるいは電子的胎児評価法が実施できない場合は臨床的観察による)などがあり、児の健康状態を評価する。胎動モニタリングとその後のアウトカムを改善させる管理戦略の有効性に関するエビデンスは限定的である。胎動評価と追跡検査のどちらについても偽陽性結果が高率であることを考えると、不必要な介入によるリスク、つまり児が早産となり母親の不安が増加するという可能性が現実にはみられる。
13件の研究が選択基準を満たした。本レビューにより、報告された胎動減少の管理を評価するには、質の高いランダム化臨床試験から得られるものがほとんどないことが示された。胎動減少の管理のみに関するランダム化試験は認められなかった。しかし、他のシステマティック・レビューが示すところによると、ドップラー、コンピューターによる胎児心拍陣痛図、および胎児心拍陣痛図を得るための胎児覚醒による検査は高リスク妊娠において有望であることを示した。
胎動減少に関する管理を導くには、ランダム化臨床試験によるデータは不十分であった。様々な原因により状態不良のリスクにあると考えられる児の母体に対する管理戦略に関する他のシステマティック・レビューの結果に基づくと、以下の戦略、ドップラー検査、コンピューターによる胎児心拍陣痛図、胎児心拍陣痛図を得るための胎児覚醒検査が有望性を示し、今後の研究では優先される可能性がある。
電子的胎児評価法が実施できない場合、胎児覚醒検査が検討されるべきである。
臨床的見地から、児の死亡前数日間に母親は胎動の減少または胎動の停止を通常感じる。この理由から、児の健康状態を評価するため、医療従事者は胎動モニタリングを推奨しており、母親は自発的に胎動モニタリングを使用している。しかし、介入の有害な影響がそのような検査の利益に勝る恐れがある。アウトカムを改善するための胎動スクリーニングの有効性に関するエビデンスは限定的であるが、間接的なエビデンスにより利益がある可能性が示唆されている。第二の疑問は、胎動減少(DFM)の自覚に対応した何らかの特異的管理が臨床的アウトカムを改善するかというものである。
最善の入手可能なエビデンスから、胎動減少に対する様々な管理の有効性を検討すること。
Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register(2012年2月28日)および選択した研究の文献を検索した。
分娩、待機的管理、胎児心拍陣痛図(目視およびコンピューターによる)、ドップラーなどの超音波検査、胎児覚醒検査(胎児心拍陣痛図または臨床所見による)などの、胎動減少に対する様々な管理戦略を比較しているランダム化臨床試験。
2名の評価者が選択基準に適格である可能性のある試験を評価し、データを専用のフォームに抽出した。胎動減少が試験での複数の選択基準のうちの一つであった場合、胎動減少サブグループに特異的なアウトカムに関する情報を収集するために試験の著者らに連絡を取った。
胎動減少の管理についてのランダム化試験は認められなかった。胎動減少などの胎児の状態不良について、リスク因子のある妊娠に対する管理戦略に関する13件のランダム化試験のうち、胎動減少のサブグループのデータは、1件の試験の著者によってのみ提示されていた。意義のある解析をするには症例数が少なすぎた(胎動減少は28例であった)。
《実施組織》Minds 江藤宏美監訳、[2012/8/29 (2016/8/18一部修正)]
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