統合失調症に対する短期家族介入

統合失調症は、その人の思考、知覚、感情に影響を及ぼす重篤な精神疾患である。研究により、精神疾患を持つ人の家族が、過度に感情的に巻き込まれたり、敵対的・批判的であったり、不満を持っていたりする場合(「感情表出」という概念として知られる)、再発する確率がより高いことが明らかとなっている。家族介入は、統合失調症を持つ人々の転帰を改善することが示されており、現在広く利用されている。家族介入は肯定的な家庭環境を促進し、家族内の感情表出のレベルを下げるように設計されており、また、精神疾患の兆候や症状に気付けるようにすることで、家族が再発を予測し食い止められるように作られている。長年に渡り、様々な心理社会的プログラムが設計されてきた(例:家族のためのカウンセリンググループ、家族療法、親族のための教育グループ、家族のためのグループセラピー、家族のための教育的講演など)。これらは技術を持ち、訓練されたメンタルヘルスの専門家によって提供される。彼らが家族と共に、2週に1回程度のペースで、時には1年間など長い期間に渡って行う。

短期家族介入とは家族介入の一形態で、メンタルヘルスの専門家が統合失調症を持つ人とその家族に、限られた回数のセッションで病気についての教育を行うものである。

このレビューでは、統合失調症を持つ人々のための短期家族介入の効果について、標準的または通常のケアと比較して調べた。2012年7月にコクラン統合失調症グループの試験登録簿(the Cochrane Schizophrenia Group's trial register)の検索が行われた。合計163人が参加した4件のランダム化研究が組み入れられた。結果は限られており、短期家族介入が統合失調症を持つ人々の入院や、医療サービスを使う人数や、再発を減らすかどうかは明らかになっていない。短期家族介入が家族の精神疾患についての理解を高めるかもしれないというエビデンスがこのレビューで見つかった。しかし、主な結果はすべて低いまたは非常に低い質のエビデンスに基づいており、強力なものは無い。それでもレビュー著者らは、短期家族介入は現在需要があり、精神健康の問題を持つ人々とその家族はリカバリーの一環として、そのような資源や地域のサービスを利用できる状態なので、短期家族介入を完全に否定すべきではないと示唆している。また、著者らは短期家族介入がより効果的になるよう改善することが可能だと示唆しているが、これは短期家族介入に関するより大規模で良質な研究が行われることにかかっている。そのような研究が、良き実践を導く助けとなり、統合失調症を持つ人々のより良い転帰へとつながるだろう。

この平易な要約は、RETHINKのサービス利用者Ben Grayによるものである。

訳注: 

《実施組織》 五十嵐百花 翻訳, 佐藤さやか 監訳 [2020.8.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域・司法精神医療研究部(以下、NCNP精研地域部;cochranereview.ncnpcmhl@gmail.com)までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。NCNP精研地域部では最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009802.pub2》

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