喘息とは気道(空気が出入りする肺への細い管)に起こる一般的な病気です。 基礎には肺の炎症があり、粘稠な粘液や痰が溜まってさらに気道が狭くなります。 喘息の人が刺激物(喘息のきっかけ)と接触すると、気道の壁の周りの筋肉が締まり、気道がより狭くなり気道の内側に炎症が起こり腫れます。 そのため、笛声音、咳嗽および呼吸困難などの喘息症状が起こります。 喘息は治りませんが、大半の人で喘息をコントロールすることが可能な薬剤があるため、日常生活を続けることができます。 喘息の人は一般的に、根底にある肺の炎症を抑えるため、吸入ステロイドの使用を勧められます。 喘息がそれでもコントロールできていない場合、現在の臨床ガイドラインでは、役に立つ追加の薬を始めるよう勧めています。 追加薬の一つは、ホルモテロールやサルメテロールなどの長時間作動性ベータ2作動薬で、喘息発作中に起こる狭い気道を元に戻すように働きます。 吸入器で使用するこれらの薬剤は、肺機能、症状、生活の質を改善し喘息発作回数を減少することが知られています。 しかし、長時間作動性ベータ2作動薬の有用性のエビデンスは成人に比べて小児では限定的であり、成人と小児の双方でこれらの薬の安全性について懸念が生じています。 喘息小児を対象に、ステロイド療法を併用して、または単独で投与される、ホルモテロールまたはサルメテロールの安全性をより綿密に考察するため、この概要をまとめました。 長時間作動性ベータ2作動薬の以前のコクラン・レビューを検討し、また小児での長時間作動性ベータ2作動薬のその後追加された試験を検索しました。 単独またはステロイド療法併用のホルモテロールまたはサルメテロールの安全性に関する情報を提示している総計21件の試験を認め、7,318名の小児が対象でした。 また、ホルモテロールをサルメテロールと直接比較している156名の小児の試験を1件認めました。 プラセボに比較してホルモテロールまたはサルメテロール投与の小児で非致死的な重篤有害事象が多く、 6ヵ月のホルモテロールまたはサルメテロール投与の小児1,000名につき21名の小児がプラセボに比べて多く非致死的イベントに罹患しました。 ステロイド単独に比べて、ステロイド併用のホルモテロールまたはサルメテロール投与の小児における重篤な有害事象について有意ではない小さな増加がみられ、 3ヵ月併用療法を受けた小児1,000名につき3名の小児がステロイド単独に比べて多く非致死的イベントに罹患しました。 この数字は、併用療法とステロイドとの平均差を示しています。 この解析では、実際のところ、非致死的なイベントが発現する小児は1名未満から12名超の範囲であるというのが答えでした。 ホルモテロールをサルメテロールと比較している小規模な試験からも他の試験での情報からも十分な結果を得られなかったので、 一つの長時間作動性ベータ2作動薬が他のものより安全であるか結論を出すことはできませんでした。すべての試験の中で死亡は1例しかなかったので、 ホルモテロールまたはサルメテロールにより死亡リスクが上昇するか結論を出せる十分な情報はありませんでした。
小児でのホルモテロールの併用定期投与またはサルメテロールの併用定期投与により、喘息死リスクが変わるか不明である。
喘息成人での2件の大規模サーベイランス研究により、プラセボまたはサルブタモール定期投与に比べて、 単剤療法のサルメテロール定期投与において喘息関連死亡リスクの上昇が認められている。 喘息小児対象の同規模のサーベイランス研究は実施されていないため、 喘息小児におけるホルモテロールまたはサルメテロールいずれかを併用する定期投与の比較安全性は依然として不明である。
コクラン・システマティックレビューによる小児試験の結果を用い、 喘息小児におけるホルモテロールまたはサルメテロール単剤の定期投与またはいずれかを併用した定期投与の安全性を評価した。
2012年5月実施のCochrane Database of Systematic Reviewsの検索からホルモテロールまたはサルメテロール定期投与の安全性に関連しているコクラン・レビューを選択し、 それぞれのレビューについて更新検索を実施した。 これらをレビューアが別々に評価した。AMSTARツールを用いすべてのレビューの質を評価した。 各レビューから、かつ更新検索で新たに認められた試験から小児に関連したデータを抽出した(バイアスリスク、研究特性、重篤な有害事象のアウトカム、コントロール群イベント率など)。 ホルモテロールおよびサルメテロールそれぞれの単剤療法および併用療法のコクラン・レビュー小児試験から、 ホルモテロールおよびサルメテロール定期投与の安全性を直接評価した。 単剤療法でのプールした試験結果と併用療法でのプールした試験結果との差を考察することにより、単剤療法を併用療法と間接的に比較した。 小児をホルメテロールとサルメテロールそれぞれにランダム化した試験による直接的エビデンスを用いてホルモテロールとサルメテロールの比較安全性を評価し、 併用療法試験の間接的比較の結果と統合した。 間接的比較の結果は、吸入副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)単剤療法に対しランダム化された場合の各製剤のプールした結果間に差を示していた。
6件の高品質な最近のコクラン・レビューを同定した。 うち4件はホルモテロールまたはサルメテロール定期投与(単剤療法または併用療法)の安全性に関連し、小児での19件の研究を組み入れていた。 関連性のあるコクラン・レビューの完了後発表された小児689名におけるサルメテロール併用療法に関する最近の2件の研究によるデータを加え、 7,474名の小児(4~17歳)の総計21件の試験となった。 残りの2件のレビューは、1つの治療と他の治療に参加者をランダム化している試験からホルモテロールの安全性をサルメテロールと比較していたが、 参加者156名の小児の1試験のみを組み入れていた。 全試験で死亡小児例は1例のみであったため、死亡率に対する影響は評価できなかった。 ホルモテロール単剤療法の小児において、原因を問わない非致死的重篤な有害事象発現について、 統計学的に有意であるオッズ上昇を認め[Petoオッズ比(OR)2.48、 95%信頼区間(CI)1.27~4.83、I2 = 0%、5試験、1,335名、高品質]、 サルメテロール単剤療法(Peto OR 1.30、95%CI 0.82~2.05、I2 = 17%、5試験、1,333名、中等度の質)、 ホルモテロール併用療法(Peto OR 1.60、95%CI 0.80~3.28、I2 = 32%、7試験、2,788名、中等度の質)、 サルメテロール併用療法(Peto OR 1.20、95%CI 0.37~2.91、I2 = 0%、5試験、1,862名、中等度の質)で統計学的に有意でない小さいオッズ上昇を認めた。 単剤療法と併用療法の試験のプールした結果を比較した。 長期作動性ベータ2作動薬(LABA)単剤療法(Peto OR 1.60、95%CI 1.10~2.33、10試験、2,668名)試験と、 併用療法試験(Peto OR 1.50、95%CI 0.82~2.75、12試験、4,650名)とに、重篤な有害事象(SAE)発現小児のプールしたORについて有意差はなかった。 しかし、プラセボコントロール群(3.6%)に比べて定期吸入ステロイド(ICS)コントロール群(0.7%)でSAE発現小児が少なかった。 結果として、ホルモテロール単剤定期投与あるいはサルメテロール単剤定期投与のいずれかを6ヵ月受けた小児1,000名につき、 原因を問わないSAEが21名(95%CI 4~45)多く発現するという絶対的増加がみられたのに対し、 併用療法で上昇したリスクは3ヵ月で1,000名につき3名(95%CI 1未満~12超)多いという結果であった。 サルメテロール単剤定期投与の安全性をホルモテロール単剤定期投与と比較している156名の小児を対象とした1件の試験を認めたのみであり、 ホルモテロールおよびサルメテロールの併用療法試験間の間接比較からの付加的エビデンスもあったが、 SAEに対する影響のCIは範囲が広く、ホルモテロールとサルメテロールの比較安全性に差があるか結論を出せなかった(OR 1.26、95%CI 0.37~4.32)。