背景
禁煙を希望する人が、NRTによって6ヶ月或いはそれ以上の期間、禁煙を継続できるかどうか、エビデンスをレビューした。NRTは、タバコをニコチンに置き代えることにより、禁煙による離脱症状を抑制することを目的としている。NRTには、ニコチンをゆっくりと補充する皮膚パッチに加えて、チューインガム・鼻腔や口腔へのスプレー・吸入器・錠剤やタブレットといった脳にニコチンを伝達するのが皮膚パッチより早いがタバコより緩やかなものが利用できる。
研究の特性
本レビューには、136のNRTに関する試験が含まれ、64640人を主たる解析の対象となった。全ての研究は禁煙を希望する人を対象に行われた。ほとんどの研究は成人を対象に実施されており、男女の比率は同等であった。6つの研究は妊娠中の女性を対象としていた。研究の対象となった者は、研究開始時に少なくとも1日15本以上のタバコを吸っていた。このエビデンスは2017年7月現在のものである。妊娠中の女性を対象として出産時に終了した2件を除き、全ての試験は6ヶ月以上継続されていた。
主な結果
全ての種類のNRTが禁煙成功率を高める可能性が示唆された。禁煙成功率は50~60%上昇した。NRTは追加的カウンセリングの有無にかかわらず効果があり、医師による処方は不要であった。NRTの使用による副作用は、製品の種類に関連があり、皮膚パッチによる皮膚刺激や、チューインガムやタブレットによる口腔への刺激が認められた。NRTが心臓発作のリスクを高めるというエビデンスは無かった。妊娠中の女性では、NRTによって出産時点で禁煙できる可能性が高くなることが示唆された。
エビデンスの質
エビデンスの質は全体的に高く、今後の研究によって本レビューの結論が変わる可能性は非常に低い。
《実施組織》星佳芳 翻訳、清原康介 監訳 [2018.7.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD000146.pub5》