癌治療(骨髄移植を含む)は口腔粘膜炎(口腔内の重度の潰瘍)を引き起こす場合がある。痛みを伴うこの症状は、飲食、嚥下に困難を引き起こし、患者の入院期間が長引く可能性がある感染症を引き起こす場合もある。これを予防するためにさまざまな戦略が試みられており、効果的なものもあることがレビューでわかった。寒冷療法(氷片)とケラチノサイト成長因子(palifermin®)の2介入が粘膜炎の予防に有益であることがわかった。スクラルファートは粘膜炎の重症化を軽減し、他の7介入、アロエベラ、アミフォスチン、グルタミンの静脈注射、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、ハチミツ、レーザー、ポリミキシン/トブラマイシン/アンフォテリシン(PTA)含有の抗生剤トローチは、弱い有益性のエビデンスを示した。異なったタイプの癌治療を受けているさまざまな癌患者においてこれらを評価した。有益性は、評価される癌と治療の組み合わせにより限定される。
10の介入が、癌治療に関連する粘膜炎の予防や重症化の軽減に有益であるとわかった。エビデンスの強さはさまざまであり、診察で使用する場合は癌の種類や治療法によって有益性が変わってくることを考慮に入れるべきである。癌や化学療法剤の種類によるサブグループ解析を行うために、十分な数の参加者で行うより優れたデザインの試験が必要である。
癌治療は次第に効果を挙げてきているが、短期的または長期的の副作用が引き起こされる。口腔内の副作用は、その予防法が多く用いられているにもかかわらず、副作用全体の大きな部分を占めている。これらの副作用の一つが口腔粘膜炎(口腔潰瘍)である。
治療中の癌患者における口腔粘膜炎の予防薬の有効性を、他の効果があるとされる介入、プラセボ、無治療と比較し評価すること。
Cochrane Oral Health Group and PaPaS Trials Registers( 2011年2月16日まで)、CENTRAL(コクラン・ライブラリ2011,年第1号)、MEDLINE via OVID(1950年~ 2011年2月16日)、EMBASE via OVID(1980年~ 2011年2月16日)、 CINAHL via EBSCO(1980年 ~ 2011年2月16日)、 CANCERLIT via PubMed(1950年~ 2011年2月16日)、 OpenSIGLE(1980年 ~ 2005年)、 LILACS via the Virtual Health Library(1980年~ 2011年2月16日)を電子検索した。関連する論文の参考文献を検索し、適合した試験の著者とコンタクトをとって試験について確認をとり、さらなる情報を入手した。
癌治療中の患者における口腔粘膜炎予防介入のランダム化比較試験(RCT)を選択した。
方法、参加者、介入、アウトカム指標、結果、バイアスのリスクに関する情報を重複して、2名のレビュー著者により独立して抽出した。不明瞭な点がある場合は、詳細について著者にコンタクトを取った。コクラン共同計画の統計学ガイドラインに従い、ランダム効果モデルを利用して、リスク比(RR)を算出した。
ランダム割り付けをした10,514例の131の研究を対象とした。試験全体で、バイアスのリスクが低かったのは8%のみであった。メタアナリシスではそれぞれの介入について2件以上の試験が含まれていたプラセボまたは無治療を比較し、粘膜炎の予防や重症化軽減に統計学的に有意な有益性のエビデンス(弱いものもあるが)がみられた。これら10の介入は次に挙げるものである:アロエベラ、アミフォスチン、凍結療法、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、グルタミンの静注、ハチミツ、ケラチノサイト成長因子、レーザー、ポリミキシン/トブラマイシン/アンフォテリシン(PTA)、抗生剤トローチ/ペースト、スクラルファート。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。