レビューの論点
生殖補助医療における補助孵化(培養室で胚の孵化を手助けする操作を加えること)は、妊娠・生児出産に至る確率を高めるか、また多胎妊娠のリスクに影響を与えるか。
背景
補助孵化は、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療で用いられることがある技術である。受精卵の周りの被膜を薄くしたり、穴を開けたりする。この操作により、受精卵が子宮内膜に着床する確率が高まり、妊娠しやすくなると考えられている。
研究の特徴
7249人の女性を対象とした39件のランダム化比較試験(RCT)を対象とした。すべての研究で臨床的な妊娠が報告されていたが、生児出産について報告されたのは14件、多胎妊娠について報告されたのは18件であった。エビデンスは2020年5月までのものである。
主要な結果
補助孵化を行わない場合と比較して、補助孵化が出生率に与える影響が不確かであることが示された。補助孵化は、補助孵化を行わない場合と比較して、多胎妊娠率を若干高める可能性がある。補助孵化は、臨床的妊娠の可能性をわずかに改善する可能性がある。補助孵化の流産への影響については不明である。
今後は、生児出産と多胎妊娠を主要な結果指標として報告する研究のみを実施し、資金を提供すべきである。
エビデンスの質
エビデンスの質は低度から非常に低度であった。主な限界は、研究方法の報告不足に伴うバイアスの重大なリスク、矛盾、不正確さ、出版バイアスである。
《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳[2021.08.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001894.pub6》