末梢関節の変形性関節症に対する鍼治療

著者の結論: 

偽治療との比較試験は、統計学的に有意な利益を示している。しかし、これらの利益は小さく、臨床的関連性について事前に定義していた閾値を満たさず、不完全な盲検化によるプラセボ効果に少なくとも一部起因していると思われる。末梢関節の変形性関節症に対する刺鍼術と待機者リストとの比較試験は、統計学的に有意で臨床的に関連性のある利益を示唆しており、その大半は期待効果またはプラセボ効果に起因している可能性がある。

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背景: 

末梢関節の変形性関節症は、疼痛および機能制限の主な原因である。安全で有効な治療法はあまりない。

目的: 

末梢関節の変形性関節症治療のための刺鍼術の効果を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ2008年第1号)、MEDLINE、およびEMBASE(ともに2007年12月まで)を検索し、論文の参考文献リストを入念に調べた。

選択基準: 

膝関節、股関節または手関節の変形性関節症のある人を対象に、刺鍼術を偽治療、別の治療、または待機者リストのコントロール群と比較しているランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独自に試験の質を評価し、データを抽出した。追加情報については、研究著者に問い合わせた。群間の改善の差を用いて標準化平均差を計算した。

主な結果: 

3,498例を対象とした16件の試験を含めた。RCTのうち12件は膝関節の変形性関節症の人のみ、3件は股関節の変形性関節症の人のみ、1件は股関節および/または膝関節の変形性関節症の人の混合を対象としていた。偽治療コントロールと比較して刺鍼術は、変形性関節症の疼痛(標準化平均差-0.28、95%信頼区間-0.45~-0.11、20点尺度で偽治療よりも0.9点改善、絶対パーセント変化4.59%、相対パーセント変化10.32%、9件の試験で参加者1,835例)および機能(-0.28、-0.46~-0.09、68点尺度で2.7点改善、絶対パーセント変化3.97%、相対パーセント変化8.63%)において統計学的に有意な短期的改善を示した。しかし、これらを統合した短期的な利益は、臨床的関連性に対して事前に定義していた閾値を満たさず(すなわち、疼痛に対して1.3点、機能に対して3.57点)、実質上、統計学的な異質性がみられた。加えて、治療の割付けについて参加者を適切に盲検化した可能性が最も高いと判定された偽治療を用いる偽治療比較試験(生理学的活性を有する可能性が最も高いと判定された同一の偽治療)に限定した場合、異質性は減少し、その結果、統合した短期的な刺鍼術の利益は小さくなり、有意性も認めなかった。6ヵ月の追跡時点での偽刺鍼術と比較して刺鍼術は、変形性関節症の疼痛(-0.10、-0.21~0.01、20点尺度で偽治療よりも0.4点改善、絶対パーセント変化1.81%、相対パーセント変化4.06%、4件の試験で参加者1,399例)および機能(-0.11、-0.22~0.00、68点尺度で偽治療よりも1.2点改善、絶対パーセント変化1.79%、相対パーセント変化3.89%)について、統計学的にわずかに有意で臨床的に関連性のない改善が示された。待機者リスト・コントロールと比較した副次的解析で、刺鍼術は変形性関節症の疼痛(-0.96、-1.19~-0.72、100点尺度で偽治療よりも14.5点改善、絶対パーセント変化14.5%、相対パーセント変化29.14%、4件の試験で参加者884例)および機能(-0.89、-1.18~-0.60、100点尺度で偽治療よりも13.0点改善、絶対パーセント変化13.0%、相対パーセント変化25.21%)に対して、統計学的に有意で臨床的に関連性のある短期的な改善を示した。刺鍼術と、「監督下での変形性関節症の教育」および「医師受診」をコントロール群とした直接的比較では、刺鍼術は疼痛と機能に臨床的に関連性のある短期的および長期的な改善を示した。刺鍼術と、「在宅運動・アドバイス用パンフレット」および「監督下での運動」との直接的比較では、刺鍼術はコントロールと同様の治療効果があった。運動をベースとした理学療法プログラムを補った刺鍼術は、運動プログラム単独を上回る改善にはつながらなかった。安全性に関する情報は8件の試験のみで報告されていた。これらの試験でも報告は限られており、方法は異質であった。

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